ビジネス

2017.03.02 17:00

ボックス共同創業者が明かす「仲間でつくった会社を世界的企業にするまで」

幼なじみのクワイザーとレヴィが、中高時代の友人であるスミスとゴッズとともに、大学時代に考えたサービスが「ボックス」だった。

スタートアップが世界規模の大企業へ成長する過程で直面する壁とは何か?Box(ボックス)の共同創業者達が会社に必要な人材や文化について語った。

ディラン・スミス(以下、スミス):中高時代の友達だった僕らはそれぞれの大学へ通っているときも、連絡を取り合っていたんだ。それで、ビジネスのアイデアを出し合っているうちに、アーロンが南カリフォルニア大学の講義で考えたプロジェクトに可能性を感じた。それが「Box(ボックス)」だよ。

サム・ゴッズ(以下、ゴッズ):じつは、僕はビジネスモデルに確信が持てなかった。でも、その頃にもらったアドバイスに、「まずは人間関係を大切に。そうすれば、いずれ自分たちの事業内容が理解でき、ビジネスモデルも自ずとついてくる」というものがあった。

アーロン・レヴィ(以下、レヴィ):最初は僕が最高財務責任者(CFO)だったけれど、3週間くらいで(スミスと)役割を交換したね。僕らの場合はちょっと変わっていて、スキルがたまたま相互補完する運もあった。

ジェフリー・クワイザー(以下、クワイザー):ただ、スキルは人に教えられるものだと思う。僕らは最初の5〜10人は、いわゆる“何でも屋”を雇おうとした。でもそこで学んだのは、「何ができるか」よりも「どのようにできるか」を考えられる人の方が会社の力になるということ。

スミス:企業文化には気を使ったね。社員が互いに徹底的に協力し合える環境を心がけたよ。大事なのは、長時間ブレインストーミングしたくなるようなアイデアやエネルギーが尽きない超ポジティブな人たちを集めること。

クワイザー:理想的なのは、企業文化に合った考えや目標を持った人。でも、すでに成し遂げたことを繰り返すだけの人はお断りだよ。

スミス:その意味では、「企業文化フィット(Cultural Fit)」よりも、貢献が期待できる「企業文化アッド(Cultural Add)」かな。

ゴッズ:リーダーの場合は、特に働く姿勢も大事。なかには、肩書や実績だけで入ってきて、面倒ごとを避けようとする人がいる。ただ社員が700人にもなれば、そんな殿様商売は許されない。

スミス:リーダーにオススメしたいのは、「コーチ」を雇うことかな。コーチを雇ったことは、キャリアを通じて僕にとって最高の決断だった。スポーツや音楽では指導者につくことはあると思うけれど、仕事でコーチをお願いすることはあまりないと思う。でもこの経験は強烈で、おかげで大きく成長できたよ。顧客に妥協しない勇気も必要。

レヴィ:僕らが幸運だったのは、割とお互いをよく知っていたことかもね。どんなことについても議論したよ。でも、人間関係に影響することはなかった。そうすると、社員も「社内政治に発展しない」と安心してくれる。
 
あと、法人向けのサービスに移行する前、それが正しい判断であることを裏付けるデータを徹底的に集めたよ。だから、最終的には僕ら4人だけではなく、社員が決断を後押ししてくれた。もちろん、ユーザー利用率やマネタイズの面で反対の声もあった。でも、長期的な観点から社員が賛同してくれたのは、僕らが社内の風通しのよさを大事にして、彼らと話し合っていたからだと思う。

スミス:会社が成長する過程でつまずいた点があるとすれば、「コミュニケーションをもっと取ってもよかった」ということかな。これは僕らが株式公開する前から言えることで、社員が100人弱で3階建てのビルに移っただけでもコミュニケーションのあり方が根本的に変わってしまった。これは想定外だったよ。会社が成長したり、移転したりする上でも透明性とコミュニケーションは大切だね。

ゴッズ:社員全員が満足できる解決策を見つけるのも簡単ではない。ある意味、“二進法”のような面もある。よいか悪いか、合っているか間違っているか……。当然、「透明性」を大切にすれば、その分だけ社員とコミュニケーションを取る時間が増え、顧客と会う時間は減る。でも、それが顧客にとってよりよいプロダクトを作る上で必要ならば、そうした決断をしなくてはいけないこともある。

レヴィ:もう一つ、僕らには譲れない指針があった。ユーザー体験(UX)については会社として決めていることがいくつかあって、売り上げや顧客の都合で妥協することは考えていなかった。だから、初期の頃はお断りしたクライアントも少なくなかったね。彼らの要望を満たすことができても、僕らが考えていた最高のサービスとは相容れないから。その点、P&Gやディズニーといった会社は、僕らと一緒に時間をかけて新しいものを作っていこうという意欲があった。

クワイザー:僕らが消費者向けのアプリを作っていたことも役に立ったよ。消費者が満足するプロダクトを作る、というDNAは大事。

レヴィ:僕はとりあえず、「スティーブ・ジョブズの賭けには乗っておこう」と思っていたね(笑)。でも、彼らにはアップルストアをはじめ、チャネルがたくさんあった。iPhoneもあったし。だから、iPad向けのアプリを作るのは難しい決断ではなかった。

いずれにしろ、臨機応変に決断を下せる会社にし、状況に合わせて柔軟に変えられる設計のプロダクトを開発したことー。それが会社を成長させたのは確かだと思う。
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文=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.32 2017年3月号(2017/01/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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