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2017.03.02

ソフトバンク、なぜ米投資会社を買収? 裏にある戦略と世界金融のトレンド

ソフトバンク 孫正義 (Tomohiro Ohsumi / gettyimages)


3. MUFGの前例

その分野のエキスパートたちの豊富な知見を買うことによって米国での代替資産運用に進出した日本企業は、ソフトバンクが初めてではない。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の在米子会社UnionBanCalは2013年、当時ドイツ銀行の子会社だったPBキャピタルの商業用不動産融資事業を37億ドルで買収した。

UnionBanCalはこれにより同年、フィナンシャル・タイムズによる商業用不動産融資銀行ランキングでトップ10入りを果たした。またMUFGは先月、トムソン・ロイターが選ぶ「年間最優秀グローバル銀行」に2年連続で選出された。

MUFGと同じく、ソフトバンクもエキスパートを引き抜くことで商業用不動産融資の分野への参入を狙っているのかもしれない。

4. アベノミクス

興味深いことに、MUFGによるPBキャピタルの不動産融資事業買収と、ソフトバンクによるフォートレス買収はいずれも、安倍晋三首相が日本経済の立て直しを進める中で行われた。

2012年12月に就任した安倍は「アベノミクス」と呼ばれる経済刺激策を実施。その最も大きな恩恵を受けた業種の一つが投資銀行だったとされる。MUFGはこれとほぼ同時期に、企業不動産(CRE)ローンの分野に進出した。

ソフトバンクのフォートレス買収は、2016年夏の第3次安倍内閣発足と新たな景気刺激策実施から数か月後のタイミングで発表された。ソフトバンクが対米投資の大幅増強に進む一方で、安倍もまた米国でのインフラ投資へと目を向けているようだ。日本政府はインフラ投資により米国で70万人の雇用と4500億ドルの新市場を生み出せるとしている。

ソフトバンクのフォートレス買収は、表面上は不可解なものに見えるかもしれない。だがこれは、代替融資業者の役割や日本経済回復策といった世界金融のトレンドに沿ったものであると同時に、テクノロジー投資に軸を移し、投資の専門家集団を買収したMUFGの手法に追従しているようにも見える同社の戦略を反映している。

翻訳・編集=遠藤宗生

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