作品賞の発表では、プレゼンターとして大御所俳優のウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイがステージに登場。ベイティが封筒を開けて「作品賞は…」と発表を始めたものの、言葉を止め、封筒を再確認すると、隣のダナウェイに目をやった。ダナウェイはそんなベイティを笑い飛ばすと、「ラ・ラ・ランド」の受賞を宣言した。
ステージ上には同作のキャストと制作陣が次々と登ったが、同時に賞関係者らも登壇。間違いを知らされた「ラ・ラ・ランド」のプロデューサー、ジョーダン・ホロウィッツは、「すみません、間違いがありました。作品賞をとったのは『ムーンライト』です」と語った。
会場が大混乱に陥る中、ホロウィッツは正しい受賞作品の名が書かれたカードを客席に向け提示。その後、「ムーンライト」のキャストやクルーがステージへと上がった。
この誤発表の原因は、ベイティに渡されたカードに、直前に発表された主演女優賞の受賞者が書かれたカードが入っていたことだった。
同部門を受賞した「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンはこれに対し、主演女優賞のカードは自分が持っていたのに、と困惑を語っていたが、実はアカデミー賞の受賞者を記したカードは万が一の事態を想定し、2セット作られるきまりになっている。
票集計を行う大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、封筒2セットを別々のスーツケースに入れて保管。集計は同社のマーサ・ルイスとブライアン・カリナンが行い、その内容を事前に知っていたのはこの2人だけだった。
PwCは賞の直後に発表した声明で、トラブルについて謝罪。さらにその後、PwC米国法人のティム・ライアン会長は、「人為的ミス」が原因だったと認めた。同会長によると、左側の舞台袖にいたカリナンが、誤った封筒をベイティに渡してしまったのだという。
カリナンとルイスは誤発表の後、すぐさまステージ上に姿を見せた。この時点で壇上に持ち込まれた封筒は合計3枚で、うち正しい勝者が書かれた1枚はベイティに渡された。カリナンは、もう1枚の正しい封筒と、誤った封筒(主演女優賞が書かれたもの)の計2枚を手にしていた。
一方、作品賞を手にした「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス監督は、ショックを隠し切れない様子で、「夢の中でさえもこんなことはあり得ない。でも夢なんてどうでもいい。これが現実なのだから。なんてことだ」と語っていた。