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2017.02.27 08:00

テレビ離れの米国で「アカデミー賞」CM枠が高騰する理由

Photo by Bryan Bedder / gettyimages

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映画業界最大のイベント、アカデミー賞が2月26日(現地時間)に開催される。受賞者らはゴールドのメッキのオスカー像を手にすることになるが、この像の製作コストは意外に安く、694ドル程度とされている。
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それに対し、アカデミー賞を放送する米ABCネットワークは今回のTV放映で、オスカー像の価値の16万5000倍の広告収入を獲得する。昨年のアカデミー賞でABCは1億1500万ドル(約130億円)の広告収入を得たが、今年はさらに売上が伸びる見込みだ。

アカデミー賞は米国のテレビ業界でスーパーボウルに次いで、広告価値が高い番組だ。調査企業のKantar Mediaによると、既に完売した今年のアカデミーの30秒の広告枠は約200万ドル(約2.3億円)で販売された。単価は昨年の平均販売価格の172万ドルから大きく伸びた。

しかし、近年はネットフリックス等の台頭により、米国ではテレビ離れが進行。スーパーボウルの視聴率も伸び悩み、アカデミー賞の視聴率も減少が続いている。昨年は7%の下落となり視聴者数は3440万人。これは過去8年で最低の記録だった。
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SNSとの相乗効果でCM価値が上昇

一方、アカデミー賞でオンエアされるCMの数は増加しており、昨年は80のCMが放映された。これは2007年から2011年までの平均と比較すると45%の増加だ。

視聴率が下がり、CM出稿数が増えているのならば、なぜ価格が上昇しているのだろう。視聴者離れが進む中で、アカデミーのような副次効果が期待できる番組は、スポンサー側としては魅力が増しているのだ。

Kantar Mediaの担当者は「アカデミーのような生中継番組は価値が上がっている」と述べる。巨大なオーディエンスが同じ瞬間を共有するライブ番組は、SNSに大旋風を巻き起こす。昨年のアカデミーの放映時間には、フェイスブック上で2400万人のユーザーが6700万件の投稿や、いいねやコメントを行った。ツイッターの投稿数も2420万回に達したという。

「SNSでの盛り上がりはスポンサー側に新たな機会をもたらし、テレビCMと連動した企画も実施される」とKantar Mediaの担当者は述べる。

「トランプ効果」で米メディア業界は活況

また、今年のアカデミーの広告価値はドナルド・トランプのおかげで例年よりも高まるとの見方もある。受賞者らが政治的なメッセージをスピーチに盛り込むことで、都会の裕福な視聴者らの関心が高まる。(ハリウッド・リポーターの調査ではトランプ支持者の66%は地方在住で、オスカー授賞式で政治的なスピーチが始まったら彼らはテレビを消すという)

テレビ視聴者の動向を調査するSamba TVのアナリストは「メリル・ストリープが一体どんなスピーチをするかを人々は待ち望んでいる。この話題は数日にわたりヘッドラインを賑わすことになる」と述べる。

今年のゴールデングローブ賞でメリル・ストリープは人種の多様性について語り政権批判を行ったが、その瞬間に視聴率は8%上昇した。政治的発言だらけだった今年のグラミーの視聴者数も、昨年より110万人も多かった。

「人々は現政権の行方に多大な関心を持っており、そのことはメディア産業に活況をもたらしている。トランプを支持する人も支持しない人も、テレビが嫌いだという人たちにとっても、関心を向けざるをえない問題だ」

偉大なアメリカを復活させるというトランプの計画が実現するかどうかは分からない。しかし、トランプが今年のアカデミー賞に良い影響を与えることは確実だ。

編集=上田裕資

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