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2017.02.25 19:00

米国で売上3倍 スバル自動車の躍進を支えるCMと「音楽の力」

スバル インプレッサ (Darren Brode / shutterstock.com)

スバル インプレッサ (Darren Brode / shutterstock.com)

この8年間で、米国のスバル自動車(Subaru of America)の売上は3倍に急増した。2016年の販売台数は前年比5.6%増の61万5132台を記録。その躍進を支えるのが、同社のCMの中で流れる音楽だ。

2007年から続いているスバルの「LOVEキャンペーン」は、誰もが共感できる素朴なストーリーと、その内容にぴったり合った楽曲が特徴だ。同キャンペーンを手がける広告代理店カーマイケル・リンチのランディ・ヒューズは「ストーリーと楽曲が合わさると、物語の世界がより豊かになり、視聴者は感情移入しやすくなる」と言う。

「Moving Out」(門出)と題された新型インプレッサのCMは、幼い少年が自宅の部屋と庭を往復しながら、自分の荷物をインプレッサの荷室に積み込む場面から始まる。両親が見守る中、少年は青年になり、同じインプレッサを運転して家を出て行く。そこに「その日は思っていたよりも早くやってきた」という父親のナレーションが重なり、両親がいつか息子に譲るつもりでインプレッサを選んでいたことが示唆される。

「ストーリー」を提示するCM

このCMについて、スバルの広告部門のマネージャーを務めるブライアン・カヴァルッチは「子供の成長を通して(インンプレッサの売りである)耐久性を描くというアイデアが気に入った。また他のCMと同様に音楽が素晴らしく、様々な面で物語をつなぐ役割を果たしている」と話す。使われている曲は、シンガーソングライターのマイカル・クローニンによる「Blue Eyed Girl」だ。

スバルのCMで使われる曲は、アコースティック楽器を多用したシンプルで親しみやすいものが多く、子供を遠方の大学に送り出す家族のドラマから、自動車事故で重傷を負う経験、ペットに対する底なしの愛まで、あらゆるテーマに視聴者を感情移入させる。

「近年のスバルのCMで使われた曲をまとめて聴くと、一貫した何かが感じられるはずだ」と、スバルCMの音楽アドバイザーを務める音楽プロダクションVenn Artsのジョナサン・ヘクトは言う。「共通しているのはジャンルではなく、独特のフィーリング。まるで気心の知れた仲間のような関係性が曲同士にある」

CMからデビューした歌手も

スバルはどのような基準で楽曲を選んでいるのか? ヘクトの人脈を活かして選ばれた音楽の多くは、インディーズのアーティストの曲だ。「多額の使用料を払って有名な曲を使うこともできるが、そうすると大抵は音楽が前面に出過ぎてしまう。『あのレッド・ツェッペリンの曲が流れるCM観た?』と『こういうストーリーが展開するスバルのCM観た? あの格好いい歌は誰の曲?』のどちらがいいか」とヒューズは語る。
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編集=海田恭子

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