1961年の創立以来、アメリカ西海岸ならではの「Laid-Back Luxury」(寛いだ雰囲気のラグジュアリー)なライフスタイルを発信してきた「フレッド シーガル」。ファッションのみならず、インテリアや雑貨、アート、飲食まで、共通の世界観のもとに扱うショッピングデスティネーションストアとして愛されてきた歴史を持つ。いまファミリービジネスを脱却して、日本での多店舗展開も視野に新たなフェーズへと向かおうとしている同ブランドの牽引者たちに、目指すヴィジョンを聞いた。創業から50年以上にわたり、ファミリービジネスの形で営まれてきたアメリカのセレクトショップ、フレッド シーガル。「ニューヨークにバーニーズ ニューヨークあらば、ロサンゼルスにフレッド シーガルあり」と目され、西海岸らしい「Laid-Back Luxury」(寛いだ雰囲気のラグジュアリー)なライフスタイルの発信地として知られてきた。
いわばアメリカンカルチャーの象徴でもある、このフレッド シーガルが、2012年から新体制に移行。メディア企業のサンドウ社と、業界最大手のタレントエージェンシーであるCAA(クリエイティブ アーティスツ エージェンシー)と投資会社のTPGグロウスによる合弁会社EMC(エボリューション メディア キャピタル)のジョイントベンチャーとして、新たなエポックを画し始めているのだ。
牽引者の一人、CAA出身でフレッド シーガルのマネージングディレクターを務めるジョン・フライアソンに話を聞いた。
John Frierson(ジョン・フライアソン)◎フレッド シーガル マネージングディレクター
カリフォルニアのライフスタイルの象徴であるフレッド シーガル。そのリローンチに関われることに、とてもエキサイトしています。フレッド シーガルはファッションだけでない、音楽、アート、グルメ、そこに関わる人々などすべてを含めて、LAカルチャーのアイコンにして発信地なのですから。
そもそも、フレッド・シーガルという一人のファッションディクレクターのスタイルを反映させたブランドゆえに、新たな経営体制に移行する際も、シーガル家との密なコミュニケーションは欠かせないものでした。レガシーを受け継ぎ、それを大切に守るという意味では、大きな責任を感じています。一方で我々は背景にメディアの力を持っています。雑誌やWEBだけでなく、CAAが抱えるハリウッドセレブも「人 メディア」として活用できるのです。彼らがフレッド シーガルの服を着てメディアに露出し、あるいは店舗でのプロモーションに参加するといった発信は、これまで以上の認知拡大へとつながるでしょう。
今年の8月には、ロサンゼルス市内に3億ドルを超える予算で開発されるサンセット・ラ・シエネガ・プロジェクトの目玉としての旗艦店オープンが予定されています。総面積2,050m²の売場に加え、ジム、サロン、ワインショップ、フラワーショップ、レストランまでを擁する新しいショップは、ウエストハリウッドの感度の高い顧客に加え、海外からの旅行者にもアピールするデスティネーションとなるでしょう。買い物だけでなく、世界観を体験する場所として、ここは重要な役割を演じることになります。
8月にオープン予定のフレッド シーガル サンセットブルヴァード店(イメージ)。同ブランドのビジョンを体現するライフスタイル提案型ショップとなる。地元ロサンゼルスの足場を固める一方で、我々は日本の諸戸ホールディングスと提携し、既存の代官山店、横浜店に加え、3月には神戸店を新たにオープンさせます。
我々が日本を重視しているのは、ロサンゼルスの既存店でも多くのアジア系観光客が訪れていたこと、そしてアジア市場においては日本がトレンドを牽引するポジションにあり、さらには国内にインバウンド市場も存在するという理由からです。諸戸ホールディングスは林業に根差していることもあり、森を育てるように長期的な視野のもとにブランディングを考えてくれます。神戸店も、きっと地元の人々から観光客までさまざまな人に、長きにわたって愛される店になるはずです。ぜひご期待ください。
諸戸ホールディングスの一事業として、日本国内でのフレッド シーガルの経営を担うMFSJ社。その社長を務める重松 健は、長年、三越の経営に参画してきた小売り業界のエキスパートである。
自らも、それまで着ていたスーツを脱ぎ捨て、ビジネスモードでありながらもフレッド シーガルらしい、リラックスしたスタイルに身を包む氏に、CAA本社にて話を聞いた。
重松 健(しげまつ けん)◎MFSJ 代表取締役社長
フレッド シーガルは、南カリフォルニアのイメージそのものでした。リラックスしていながら、その中に豊かな質感を湛えた商品やサービスたち。これからの時代、日本においても、そうしたゆとりのあるライフスタイルに対するニーズがますます高まっていくと思っていましたから、新体制でのリローンチ参画に迷いはありませんでした。
かつて日本では、お客様の中にブランド追従、トレンド追従といった傾向が見受けられましたが、これからは本人の満足感、心地よさが優先されていく時代です。フレッド シーガルには、昔も今もタイムレスでいいもの、肩肘張らずに着られて生活に潤いをもたらしてくれる服が揃っています。
社内では「Understated and Cool」(控えめで、かつクール)という言葉が使われていますが、何気ないシャツをさらりと一枚で着ていても、「あの人はアイコニックでクールだね」と言って貰えるのが、フレッド シーガルの服なんです。デザインではなく、着る人の価値観やライフスタイルを反映させて見せる服。そこが、新しい働き方に移行しつつある日本の市場にも受け入れられていくものと思っています。
フレッド シーガルは、出店計画においても独自の路線を貫いています。もともとが「Laid-Back Luxury」(寛いだ雰囲気のラグジュアリー)を身上とするブランドなので、日本でも銀座や表参道のような、いわゆるファッションディストリクトとは異なる場所に出店してきました。代官山は生活文化的なレベルの高い街として。横浜は海辺のロケーションで、アクティブでスポーティなライフスタイルを体現している街として、それぞれの市場に合わせた店作りと品揃えを行ってきました。