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2017.02.27

今年の注目株「キレイなオジサン銘柄」とは

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これはアメリカ西海岸のネット関連の「ニュー・エコノミー」の人々が反省すべき問題もはらんでいる。ニュー・エコノミーが生み出した利益の背景には、多くの企業が滅びていったという実態がある。
 
もちろん商売の本質とは、法を遵守しながら自由に競争し、消費者と株主のためにベストを尽くすことであり、競争に敗れた企業を助ける責任はない。

とはいえ、そうした会社や社員に対する想像力や、場合によっては、そのような組織や人をITの力で救う、という哲学や企業倫理が必要だったのではないか。
 
結果的に生み出された“負け組”は、同じように正当な方法、すなわち投票で反撃した。これを「ポピュリズム」と呼ぶ声もあるが、単なる「人気取り政治」と斬り捨てるならば、長引くかもしれない。
 
日本でも不祥事を起こした新興IT企業が非難を浴びている。ニュー・エコノミーの株価はマーケット全体と比べて冴えない。こうした背景には、ニュー・エコノミーに対する見方が厳しくなってきたことがある。
 
これからのニュー・エコノミーは、効率やスピードだけではなく、きちんとコストをかけて真面目に商品やサービスを作り上げ、社会との調和を図ることが重要になるはずだ。「マジメなニュー・エコノミー」というのが、新興企業を見る際の重要な視点になるのは間違いない。
 
会社訪問をしていると、もう一つ大きな流れが見えてくる。それは「オールド・エコノミー」と呼ばれる会社群の中にも変化の兆しがあることだ。素材や自動車・エレクトロニクスの部品を製造している中小メーカーは日本の上場企業には山ほどある。

これらの会社は油臭く、スマートではなく、ニュー・エコノミーに比べれば成長力も低く、経営者も高齢化していて見るべきものがあまりない、というように、株式市場の中では“窓際族”のような扱いを受けていた。現実社会でもそのような窓際族のオジサンはいる。体形はメタボで、着こなしもダサい。加齢臭もするし、考え方も古臭い。

それでも中には、ライザップなどに通い、メタボ体形からシックスパックが浮かぶお腹へ変え、加齢臭を防ぐ石鹸で体を洗ってさわやかになったオジサンがたくさんいる。株式市場でも目を凝らすと、昔はイケてなかったのに、すっかりキレイなオジサンに変貌したような会社が出てきている。
 
製造現場の最新鋭化、効率化を進め、資産効率を考えた経営を行い、ROE(株主資本利益率)を向上させる。オールド・エコノミーにも、長期投資に耐えうる会社が出てきているのだ。これを「キレイなオジサン銘柄」と呼ぶことにしよう。
 
2017年の株式市場は「マジメなニュー・エコノミー」と「キレイなオジサン銘柄」に注目するとよい成果が得られるのでは。

文=藤野英人

この記事は 「Forbes JAPAN No.31 2017年2月号(2016/12/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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