スウェーデンには、抑圧された人たちの避難先としての長い歴史がある。だが、政府はそうしたこれまでのリベラルな移民政策が生んださまざまな問題への対応に苦慮している。2015年には欧州連合(EU)加盟国で最多となる約16万3,000件の難民申請を受け付けたものの、昨年は申請条件を厳格化。それにより、申請が受け入れられた人はおよそ3万人に激減した。
反移民感情はその他の欧州各国と同様、スウェーデンでも高まっている。そして、政治に対するその影響力も強まっている。最近の世論調査では、極右政党のスウェーデン民主党の支持率が上昇、18%となった。
さらに、スウェーデンを含め欧州各国が、移民の社会への融合という問題に直面している。移民の間では失業率が高く、社会に溶け込むことに苦労する人が多い。
「トランピアン」の時代も事実は事実
ただし、たとえ今が「トランピアン(トランプ支持者)」たちの「もう一つの事実」の時代であっても、それでも事実は事実に変わりがない。スウェーデン全国犯罪防止協議会の発表によれば、同国の犯罪発生状況は、以下のとおりだ。
・死者を出した事件のうち、「殺人、過失致死、傷害致死」に該当する事件の発生件数は、同協議会が追跡調査を開始した1990年代以降、減少している。
・人口約950万人の同国で2015年に発生した死者を出す暴力事件は、112件だった。前年からは25件の増加となった。
・これらの事件のうち、銃器が使われたのは約30%だった。
・報告された性的暴行事件の件数は、法的定義の変更などもあり過去10年間に増加した。しかし、2015年には前年比12%減となった。
同協議会が2016年に実施した調査では、「暴行、脅迫、性犯罪、強盗、詐欺、迷惑行為」の被害に遭ったことがあると答えた人は回答者の13.3%で、前年から2パーセントポイント増加した(2015年は前年比で減少)。ただ、2015年のこの割合は、多数の難民を受け入れ始める以前の2005年と同じ水準だった。
同協議会は、「向こう数年間の結果によって、2016年に見られた増加が新たに見られ始めた傾向なのか、比較的安定した動向の中で一時的に見られた増加なのかがはっきりするだろう」と述べている。