女子の間で起こる「ヘルシー」の逆転現象、義務ではなくご褒美に

saschanti17 / Shutterstock, Inc.

「ヴィーガン」という言葉は今、皆様にとってどれくらい身近でしょうか。

今や認知は浸透してきましたが、「ヴィーガン」とは「乳製品も食べない菜食主義」、つまり、肉や魚、乳製品を食べない人を指します。本来は菜食「主義」ですので、少し取り入れるとか中途半端なものは正しくないという声もあるかもしれませんが、「まずは1食」「最近食べすぎだから今日だけヘルシーなものを」など、好きなときに好きなだけ、自由にヴィーガンメニューを選ぶ人も増えています。

2016年はヴィーガンブーム元年かと思うほど、サラダやコールドプレスジュース専門店のオープンが相次ぎ、アサイーやキヌアなど、栄養価が非常に高く一般的な食品とサプリメントの中間といわれる「スーパーフード」も一気に広まりました。

日本にもヴィーガン対応メニューを備えたレストランが増えている中、特に表参道エリアがその賑わいを見せています。2015年12月にはその先駆けとしてCITY SHOPがオープン。翌2016年には、同エリアに2号店CITY SHOP NOODLE、さらにその隣には雑誌「ELLE」が手掛けるELLE cafe AOYAMAもオープンしました。

表参道は今、おしゃれでありながらヴィーガンやグルテンフリーに対応したメニューを揃えるお店が集まる聖地となっています。

そんな中、この1年で女子たちは、“ヘルシー=身体に良い”だけでは満足できなくなってしまいました。新しく登場した、おしゃれで美味しいヴィーガン。それがなぜ東京女子の審美眼と胃袋、両方を満足させるか考えてみました。

まず、ヘルシーな食材はフォトジェニックだ、という再発見。例えば緑黄色野菜のように、色鮮やかな食材が栄養価も高いというのはもともと知られていることでしたが、写真というフィルターを通すことで、それがさらに“見栄え”という魅力も発揮するようになったのです。

CITY SHOP店内の壁面には色とりどりの野菜がディスプレイされ、ショーケースには、旬の野菜やフルーツに、キヌアや亜麻仁、チアシードオイルなどスーパーフードを惜しみなく使ったデリが、毎日15種類ほど並びます。

どれも素材の組み合わせや味付け、盛り付けが新鮮で発見にあふれていて、「野菜だけで満足できる」ところが愛される理由。連日、そのデリを写真におさめる女子は後を絶ちません(写真下)。



ELLE cafe AOYAMAの人気メニュー「ゆめのか苺のスムージーボンボン」に至っては、期間限定メニューにも関わらず既に何千件もの写真がインスタグラムに投稿され、それを見た女子が全国から集まる東京観光のマストスポットとなっているとも言われます。カラフルで食材の形を活かしたビジュアルが、女子の心をくすぐっているのです。

そして何より、“食事としての満足度”が高まったことにより、ヘルシーが「義務」から「ご褒美」に逆転したことが大きな理由でしょう。

そもそも女子は野菜好きというイメージがあるかもしれません。ただ、美味しいから食べているのかと言われれば、健康や美容を考慮して食べているという人も正直多かったはず。これまでのヴィーガン料理は「ヘルシーなのに美味しい」と、価値としてヘルシーが勝っていました。

しかし、今や「美味しい、楽しい、そういえばヘルシー」と、そのバランスが変化。これまでの義務感あるヘルシーという感覚が変化したのです。

「ヘルシーなのに美味しい」は当たり前。それに加えて「見ているだけでも楽しい」「食べているとおしゃれ」と思わせるお店の工夫がヘルシーにつきまとっていた義務的な要素を軽減し、「ご褒美」として何度でも足を運びたくさせているのだと思います。

栄養価が高いものや見た目のいいものを選び、さらに身体にいいように調理法にこだわったりと、野菜料理は今や高級品。せっかく少しリッチなものを食べるのであれば、美味しいのも当たり前。健康に配慮した良質なメニューで、美容にも気を遣いたい。目にも鮮やかな空間で、味覚だけでなく心まで満たしたい。──そんな欲張りが、乙女心なのです。

文=山田 茜

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