自信がなくても大丈夫、「心を手当て」し自己肯定感を保つ方法

NYで活躍する心理学者/セラピスト、ガイ・ウィンチ氏。


――友人の起業家で、社会的に成功しているように見えるのに、「自己肯定感が低い」と悩んでいる人がいます。彼らは「今回はたまたま上手くいっただけで、次は失敗するかもしれない」「過大評価されているけど、本当はこんなにすごい人間ではない」と言います。どのようなアドバイスが有効ですか?

ウィンチ氏:多くの起業家にアドバイスをしているのが、成功のステップ毎に自分を認めてあげることです。起業家にとって、成功のステップはたくさんあります。まずアイデアがあり、そのアイデアが現実になる、資金調達ができる、そして会社規模が大きくなって売却するなどです。多くの起業家は、それぞれのステップで自分に対してご褒美をあげません。それが問題なんです。

起業家に限らず言えることですが、自分が良いことをしたとき、頑張ったときは自分を評価し祝ってあげてください。各ステップに対して達成したことは、ラッキーだったわけではなく、自分がちゃんと頑張ったこと。それを毎回きちんと評価することを勧めています。

――日本の特徴なのかもしれませんが、「こんなことをやりました!」と、ソーシャルメディアなどに投稿すると「大したことない」と批判されることがあります。ちゃんと自分を祝ってあげるためには、どうすれば良いですか?

ウィンチ氏:公の場で発表するのは、確かに少し威張っているように思われてしまう可能性があるので、心の中でパーティーを開くんです。

例えば、私の本は20か国語に翻訳されていますが、エージェントから「この言語で売れた」と知らせがあるたびに、その国の料理が食べられるレストランに行ってご馳走を楽しんだりします。自分のお祝いだと誰も知らなくても、自分自身で功績を認めてあげることが重要なんです。



起業家として成功する人より、失敗する人のほうが遥かに多いですが、成功している人は自分より成功している人を意識しており、失敗した人に目を向けて「自分はすごくラッキーだった」と思う人はあまりいません。「たまたま幸運だった」と考えてしまっては、自己肯定感は得られませんが、自分より成功した人・そうでない人、双方と比較して適切に評価することがポイントです。

――最後に、TEDや今回出版された本で「みんながもっと“感情の健康”に気を遣うようになり、心が健康になったら、もっと素晴らしい世界になる」とおっしゃっていますが、今後その世界を実現するために、どのような活動をしていくのか教えてください。

ウィンチ氏:すごく大きな目標ですが、実現したいですね。TEDでも話しましたが、100年前まで、人間は手を洗うことも歯磨きすることも知りませんでした。でも、認識さえできればすぐに改善できるんです。感情の健康も、今はまだ気づく段階。スタート時点に立ったばかりでゴールは見えませんが、少しずつ感情の健康の大切さについての認知を広げる活動をし、変えていきたいと考えています。


ガイ・ウィンチ(Guy Winch, Ph.D)◎ 心理学者。ニューヨーク大学で臨床心理学の博士号を取得後、セラピストとしてニューヨーク大学メディカルセンターに勤務。その後マンハッタンで開業し、20年以上にわたって心理療法を実践している。講演家としても定評があり、TEDトーク「感情にも応急手当が必要な理由」は430万回以上(2017年2月時点)視聴され「2015年で最も人気のトーク」にランクインした。

インタビュー・構成=筒井智子、写真=藤井さおり

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