退職したばかりの夫トレーシーとジョアンが車の異変に気付いたのは、昨年10月のことだった。走行距離が1万マイル(約1万6,000km)を超えたころ、タイヤに問題があるとの警告が出たためにディーラーで点検してもらったところ、タイヤには何も問題がなかった一方、配線ケーブルがネズミにかじられていたことが分かった。
ジョアンらは直前にドライブしたグランドキャニオン国立公園の中で駐車した場所が悪かったのだろうと考え、修理代400ドル(約4万5,000円)を支払った。だが、ネズミとの戦いはこれで終わるどころか、始まったばかりだった。数日後、今度は車の冷却水が減っていることを示す警告ランプが点灯。ボンネットを開けてみると、目に入ったのは新たにかじられたばかりのケーブルだった。
ジョアンはインターネットを使って、ネズミ駆除の方法を調べた。ペパーミントが効果的だということが分かり、駐車スペースの周辺にまいてみた。しかし、その後またボンネットを開けてみると、エンジンブロックの上には丸々と太ったネズミがうずくまっていた。
そこで夫妻は、サンディエゴ市内の別のボルボのディーラーに相談。ケーブルは交換が必要で、200ドルを請求された。このディーラーはネズミの害が発生していることをすでに把握しており、それを聞いた夫妻は、改めて対策を講じることにした。
自宅に帰り、トレーシーが車の周辺にわなを仕掛けると、1匹は捕まえることができた。ジョアンはその他の効果的な駆除方法を求めてもう一度、インターネットで検索。コヨーテの尿がネズミを遠ざけるのに効果的だとの情報を得た。そして、24ドルと送料を支払い、ホームデポの通信販売で「尿」を購入。毎晩車の周りにまいた。
狙われるのはボルボだけ?
このころまでに、夫妻は一つおかしな点があることに気が付いていた。並べて駐車している古いトヨタMR2は、ネズミの害を受けていなかったのだ。不思議に思ったジョアンは、ボルボのホットラインに電話をかけてみた。すると、新しいボルボの配線ケーブルなどには、プラスチックより生物分解性が高い大豆由来の保護材が使用されている可能性があり、それが原因と考えられるとのことだった。
ミシガン州にある別のボルボのディーラーによれば、ネズミによる配線ケーブルへの被害は確認されているが、大半は地方部で起きており、都市部では例がないという。だが、実際にはこうしたケースはジョアンだけ、そしてボルボだけにはとどまらない。
購入したばかりの2014年モデルのMazda5(日本名:マツダ プレマシー)が、同様の被害を受けた人もいる。週末にキャンプ場に行った帰り、走行中にギアがセカンドにしか入らなくなり、時速30km以上を出すことができなくなった。
この場合も、自動変速装置に問題が起きた原因は、ケーブルがネズミにかじられたことだった。購入から30日間の保証が有効だったため、1,200ドルの修理代はディーラーが「しぶしぶ」負担したという。
その他にも、トヨタとホンダの車を保有する人たちが2016年、大豆由来の保護材を使ったケーブルの交換に数千ドルがかかったとして、それぞれ集団訴訟を起こしている。