意外であり必然、ジャガー・ランドローバーのEV開発

フロア内に駆動系を収めるEV独自の構造により、「F-PACE」より小ぶりなボディサイズながら、高級サルーン並みの室内空間を実現。リチウムイオン電池と電気モーターは自社開発であり、巡行距離は約500kmに達する。

もはや、自動車界のあらゆるプレミアム・ブランドが”エレクトリファイニング・シンドローム”とも呼べる症状にかかっているのではないか?

そう思うほど、2016年はプレミアム・ブランドによるEVの発表が続いた。そのなかでも、ジャガーが市販を前提にしたEVのコンセプトを発表したのは、意外でもあり、必然でもあった。
 
あえて「意外」と評したのは、比較的早い段階で、EVの開発を宣言してはいたが、「E-PACE」なるクロスオーバーEVを開発中という噂があったものの、なかなか現実的な形で目にするには至っていなかったからだ。

しかしながら、水面下で進んでいたようで、今年に入って急速に電化にむけて舵を切ってきた。コンパクト・クロスオーバーのEVモデルの開発がスタートしたと報じられてまもなく、フォーミュラEへの参戦にむけたレーシングチームを立ち上げるところまで漕ぎつけたのだ。

そして、感謝祭を目前に控えた11月末に開催されたロサンゼルス・ショーで、2018年の市販を前提にしたEVのコンセプトカー「I-PACEコンセプト」がベールを脱いだ。ロングノーズのスポーツカー・ルックの外観ではあるが、実はクーペ風のルーフラインを持つキャブフォワード・デザインを採用する。

従来のエンジン車とはまったく異なる構造を有している。フロア内に電池を抱え込むことで重心を低めて、スポーティな走りを実現した。前後のアクスルに1基ずつ搭載した電気モーターにより、最高出力400ps/最大トルク700Nmを発生し、4輪を駆動する。トルクの立ち上がりが早いという電気モーターの特性を活かして、現行モデルに積まれる5LV8エンジン並みの加速性能を発揮する。

外観から想像するより、ルーミーなインテリアに驚かされる。フロア内に駆動系を収められるEVならではの構造を利して、クロスオーバー並みのスペースユーティリティを備えている。
 
スポーツカー・ブランドを標榜するジャガーにとって、環境を重視しても、パフォーマンスは犠牲にしない。そう、EVの開発は「必然」だったのだ。

文=川端由美、構成=青山 鼓

この記事は 「Forbes JAPAN No.31 2017年2月号(2016/12/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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