ディープラーニングで自動駐車も実現へ、AI時代のアウディの前進

「Audi Q2ディープラーニング コンセプト」は、アウディの子会社である「アウディ エレクトロニクス ヴェンチャー(AEV)」の先行開発プロジェクトの一貫だ。今後、実車を使っての検証に進む計画がある。

人工知能(AI)と聞くと、なにやら、空恐ろしい気がする。世界的な宇宙物理学者のスティーブン・ホーキングや、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツといった当代一流の人たちまでが、AIの発達に警鐘を鳴らしているから、なおさらだ。
 
ところが、AIの専門家たちは、意外なほど楽観的だ。AIの能力が人間以上に発達しても、AIを教えることができるのは人間だけだし、思考プロセスが人間と違っても、結果の正否は人間が判断するからだ。裏を返せば、稀代の研究者や起業家であっても、未知の分野には恐怖感を覚えるワケだ。
 
翻って、自動車分野に目を向けると、ここ数年で急速に、AIが取り沙汰されるようになった。自動運転の開発では特に画像認識が重要で、まさにAIの活躍の場なのである。なかでもアウディは、2011年という早い段階からAI開発で最先端を走るNVIDIAと手を組んで自動運転の開発を開始した。
 
さらに2016年12月、バルセロナで開催された「神経情報処理システム」なるAI専門家が集う国際会議の場で、クルマ自身が駐車の方法を学ぶ過程を紹介したのだ。もちろん実車ではなく、1/8モデルの「Audi Q2ディープラーニング コンセプト」によるデモだが、外部の手助けなしに、クルマが自分でスペースを探して駐車する様子は見事だ。

前後の2つのカメラと10個の超音波センサーから得たデータを車載CPUで解析し、駐車スペースと自車位置を認識。正しい駐車位置への移動を演算で弾き出す。それに応じて、ハンドルや電動モーターを動かすシグナルに変換し、クルマを移動させる。

従来のコンピューターではプログラムをインプットしておく必要があったが、AIによるディープラーニングでは、コンピューターが試行錯誤を繰り返して学んで、正しい行動を発見し、最後には正解を導く。
 
“Vorsprung durch Technik=(技術による前進)”を企業哲学に掲げるアウディは、AIは次世代の自動車開発に重要と考え、この分野における開発に積極的に関わろうとしているのだ。

文=川端由美、構成=青山 鼓

この記事は 「Forbes JAPAN No.31 2017年2月号(2016/12/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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