同シリーズが”女の子らしさ”を象徴するブランドであることを考えると、ローガンの登場は、玩具業界のジェンダーフリー化を後押しするものとなりそうだ。
ジェンダーフリー化の流れ
玩具業界は、多様性を尊重し社会の変化を反映すべく、新しい流れに突入している。小売各社が、性別に分けて商品を販売する方針から離れ、ジェンダーフリー化の流れに乗っているのだ。
小売大手のターゲットでは、玩具に“男の子向け”“や”女の子向け”という表示をつけるのを廃止。ディズニーストアでは、ハロウィーンのコスチュームを“子ども用”という表示に変更した。
マテルが展開するそのほかのブランドにも、変化の波は押し寄せている。2017年1月のスーパーボウルでは、6人の父親たちが娘とバービー人形で遊ぶCMを放送。2016年には、DCコミックスのスーパーヒーローのフィギュアにヒロインシリーズが登場した。
玩具業界におけるジェンダーフリー化は、「商品の種類やマーケティング手法に、徐々にではあるが着実に影響を与えている」と、調査会社ユーロモニター・インターナショナルのマシュー・ヒューダックは言う。
「子どもたちは、玩具を通して“ジェンダー平等”の意識を持つようになる。親たちはそのような玩具を求めており、各メーカーもその需要に応えている」
男の子の人形が意味するもの
「これまでのアメリカンガールが、いかに“女の子らしさ”に固執してきたかを考えると、男の子の人形の登場は極めて大きな意味を持つ」とヒューダックは指摘する。
だが実際のところ、人々の意識はあまり変わっていないのが実際だ。「親たちは性別にかかわらず人形を買い与えることに抵抗がなくなってきているものの、今も多くの親が女の子向けの玩具として人形を購入している」
ヒューダックは「男の子向けの人形をつくっても、あまり大きな意味はない」と考えている。男の子たちは既にスター・ウォーズなどのキャラクターの「人気のアクションフィギュアで十分に楽しめている」からだ。
だがニュージャージー州在住で2人の息子を持つマデリン・ピーチュニグは異論を唱える。
「アクションフィギュアは、警察官やスーパーヒーロー、消防士などのキャラクターが多い。 男の子が心を通わせることができ、“友達”として一緒に学校に行けるようなフィギュアは見たことがない」と彼女は言う。
今回アメリカンガールのシリーズに登場したローガンこそが待ち望んでいた“友達”のようだ。ニュース番組でローガンが紹介されていた時、「4歳の息子はそれまで遊んでいたおもちゃを手離してニュースに見入っていた」とマデリンは言う。
「息子はすぐに私に聞いてきた。『あの子の名前は?男の子だよね?ドラムができるんでしょう?』――そしてもちろん、何より重要な質問も。『あの人形、買ってくれない?』」