基幹業務効率化から、オムニチャンネル化までICT投資を強化ICTに関して明治安田生命は、現在、積極的な投資を行い、システムの拡充を進めている。例えば、保険契約の引き受けから、契約の見直し、保険金・給付金の支払いに至る、保険事業の基幹業務に関わる効率化である。「そうした領域は、当社にとって、まさにICT投資の"本丸”。今後、例えばお客様からの契約申込に関する手続きや、保険金支払い時の本人確認等もデジタル化されていく事は必然で、さらに取り組みを加速させていきます」と牧野は語る。
また、オムニチャンネル化の促進にも取り組んでいる。社会全体のデジタル化が進み、スマートフォン等のデバイスも浸透している今、これまでのMYライフプランアドバイザーによる対面サービスに加えて、例えばSNS等デジタルを活用したコミュニケーションの可能性を探るといった施策も、そうしたオムニチャンネル戦略の一つと言える。
「現在マンパワーに依存している部分をデジタルで代替していくのではく、対面によるコンサルティングやアフターフォローの局面で発揮されるマンパワーを増幅すべく、デジタルを補完的に活用していこうというのが当社のオムニチャンネル化についての考え方です」
そこでカギを握るのがクラウド活用だ。同社は、金融機関としては早い段階からクラウドを採用してきた企業として知られる。その一つの事情が11年3月の東日本大震災の発生に伴う被災地での保険業務の復旧対応だ。「未曾有の災害により、被災されたお客様の中には、保険金の請求手続きを行いたくても、本人確認書類が住宅とともに津波で流されてしまったという方が数多くいらっしゃた。そのため、当社のワークフローによる保険金・給付金手続きでの対応が困難になるという問題に直面。そこで、被災地のお客様の情報や状況を正確に把握し、迅速な請求手続きと保険金の支払いを進めるためのシステムを直ちに構築しました」と牧野は当時を振り返る。
同社は、Salesforceのクラウドプラットフォームを導入することで必要なシステムをわずか1週間という短期間で実現。このシステムでは約60万件に及ぶ契約に関する、MYライフプランアドバイザーによる顧客訪問状況、顧客からの支払い請求状況、さらには顧客宛ての通知や電話等の状況等の各種情報を集約して社内で共有・管理する仕組みを整えた。その結果、保険金等の支払い業務を速やかに復旧させることができたのだ。
「東日本大震災での経験は、当社におけるクラウド活用を加速させる一つのきっかけとなりました。さらに現在、ブランド戦略で掲げる『対面でのアフターフォロー』の重要性を再認識する出来事でした」と牧野は明かす。