「瓶内二次発酵」と呼ばれる伝統的な製法でつくられるのが特徴で、これらすべてを兼ね揃えるのは、世界で2つしかない。フランスのシャンパーニュと、このフランチャコルタだ。
「ブドウ畑は3,000ヘクタールほどで、決して大きな生産地ではありません。生産量が少ないからこそ、高品質を目指す。そんな思いでワインをつくり続けてきました」
フランチャコルタ協会のヴィットリオ・モレッティ会長は、そう話す。ミラノから電車で1時間ほど。近郊の町で暮らす人々の避暑地として栄えてきたということもあり、豊かな食文化が根付く。
モレッティ会長は、フランチャコルタを「より自然なスパークリングワイン」と表現する。酸が強ければ強いほど、糖を多めに加えることでバランスを取る傾向にあるが、フランチャコルタは酸が少なく、口当たりも柔らかい。糖を過剰に加える必要がない。最新の冷却装置なども積極的に取り入れることで、酸化防止のための亜硫酸塩の添加も最小限まで抑えられるようになった。実は、ワインを飲み過ぎた翌日の頭痛を引き起こすのはこの亜硫酸塩。少なければ少ないほど、身体にも良いと言えるのだ。
かねてスパークリングは食前酒とされてきたが、近年イタリアでは、肉料理も、デザートも、スパークリングワインで通すのがトレンドだという。
「フランチャコルタは、こってりとした肉の煮込み料理なども、しっかりと支えることができるんです」
2015年の生産量は1,650万本ほど。これはシャンパーニュの生産量の5%程度の数字だ。伸びしろはまだまだある。ならば、とついつい戦略に話を向けてしまうが、「明確な戦略はありません、まずは地域とワインについて知ってもらうこと」と話す。
「日本ではテロワールという観念が、『土壌』や『気候』と捉えられていますが、本当の意味はもっと広い。地域のノウハウの蓄積、歴史や文化という意味も含まれているんです」
ワイン畑と、小さなホテルやレストラン。美しい自然とその土地を愛する人々。話を聞いているだけで情景が目に浮かび、「行ってみたい」と思わずにはいられなくなる。それが、フランチャコルタの最大の魅力なのだ。
フランチャコルタのワイン畑の約70%が有機栽培、もしくは移行中の畑。日本への輸出量は、全体の22%を占める。「寿司や刺身のほか、天ぷらとも相性が良い。口のなかがすっきりして、消化を助けてくれます」(モレッティ会長)
ヴィットリオ・モレッティ◎2015年12月、フランチャコルタ協会の会長に就任。同協会は、フランチャコルタの生産規則の遵守を保証し、管理する組織として1990年に創設された。加盟ワイナリーは116にも及ぶ。