中国人の海外旅行先「香港・台湾」の人気が低迷の理由

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2016年の中国人の香港、マカオ、台湾への旅行者数は前年比で400万人近く減少し、初めて海外旅行者数の半分を下回った。

旅行業界の調査企業COTRI (China Outbound Tourism Research Institute)によると、2016年の中国人の海外旅行者数は1億3,680万人。前年比伸び率は2.7%と、低い数値になった。旅行先の内訳は、中華圏(香港、マカオ、台湾)が全体の48.8%を占め、6,670万人。その他の海外が51.2%で7,010万人だった。

香港、台湾への旅行者数は減少が続いている。香港への旅行者数は2016年、前年比7%減の4,280万人だった。香港への旅行者数の減少は、香港がソウルや東京に比べて、“買い物天国”としての魅力を失いつつあることや、中国人にとって香港が自慢できる旅行先でなくなったことの現れだ。

さらに、台湾は中国人旅行客の急減に見舞われている。2008年以降、中国人は個人でもツアーでも台湾を訪問できるようになり、台湾への旅行者訪台者数は急増した。しかし、その数字は2016年5月から急速に減少。昨年は前年比16%減の350万人だった。

原因の特定は簡単だ。2016年5月に発足した台湾の新政権は、「一つの中国」の原則を認める「92年コンセンサス」に同意しておらず、その結果、台湾への団体旅行許可の大半が取り消された。今では台湾への旅は個人のみに許されている。

ただし、香港と台湾への旅行者数は2016年に底打ちし、今後は回復するとみられる。COTRIは今年の中国本土からの中華圏への旅行者数を前年比2%増の6,800万人と予測する。

中国の国内の旅行市場は混雑し、価格も上昇している。中国人にとって安心できる旅行先として、香港やマカオ、台湾への旅行を選択する人々も増えそうだ。

編集=上田裕資

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