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2017.02.17

27歳で社長就任、老舗「理化電子」の改革を進める戸田泰子

理化電子 代表取締役 戸田泰子

27歳で、理化電子を背負う覚悟を決めた。全社員の動揺を鎮め、「老舗ベンチャーへの生まれ変わり」を合言葉に改革を進める。

2015年3月。リーマンショックの煽りから、依然として財務状況が厳しい時勢に、戸田泰子は理化電子社長に就任した。

戸田はこのとき27歳だった。新卒で勤めたコンサルティングファームを辞め、いずれは家業を継ぐ心積もりで、2年前、理化電子に入社したものの、こんなに早く受け継ぐことになろうとは思っていなかった。その戸惑いを吹き飛ばすかのように、総勢15名の銀行担当者の厳しい視線が注がれる中、強い眼差しで自らのビジョンを語った。

その後、わずか1年で、戸田は銀行の融資取引正常化にこぎ着けることになる。

社長就任の際、改革への理念として掲げたのは、「老舗ベンチャーへの生まれ変わり」。理化電子は1961年創業、エレクトロニクスの黎明期から精密治工具の製造・販売会社として技術力を誇りに歩んできた。その土台を活かしながら、ベンチャー企業のごとく新しいチャレンジに二の足を踏まない。そんな組織風土をつくるため、まず戸田が整備したのは「提案制度」だ。

「新技術のアイデアや業務改善策まで、何でも提案してほしい。必ず役員が目を通す」と宣言した。すると、業務効率や工場の労働環境など、大小さまざまな改善箇所が寄せられた。戸田は、各提案にフィードバックをし、どんな意見にも耳を貸す姿勢を示して社員との信頼関係を築く。

提案制度には、15歳でアメリカ留学し、多国籍の生徒たちと寮生活を送った経験が生きている。アメリカでは、持論を持ちどんな意見でもまず声にすることが第一とされる。日本では逆に「出る杭は打たれる」という風潮がある。老舗である理化電子にもその風潮があったが、提案制度が一石を投じたと感じている。

「でもまだ何も成し遂げていない。当社の技術開発の分野では、私は誰より未熟なので、彼らが輝けるための環境づくりが急務と思っています」
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文=みよしみか、写真=セドニック・ディラドリアン

この記事は 「Forbes JAPAN No.31 2017年2月号(2016/12/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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