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2017.02.27

脱・働きやすさ、「女性の活躍」を目指す発想が諸問題を解決する

Photo by Rawpixel.com / Shutterstock, Inc.

フォーブス ジャパンは昨年12月、女性向けのライフキャリア支援事業を展開するLiBの協力のもと、日本最大規模の女性アワード「JAPAN WOMEN AWARD 2016」を発表した。

“働きやすさ”ではなく“真の女性活躍”の促進・発信を目指す同アワードや「働き方」問題について、LiBの松本洋介CEOに話を聞いた–。


私たちLiBが、フォーブスジャパン主催のJAPAN WOMEN AWARDの後援をお引き受けしたのは、本アワードの理念が、私たちの考え方と一致したからです。

本アワードが目指すのは、これまで日本政府や一般企業が推進してきた「働きやすさ」という発想からの脱却です。いくら福利厚生を充実させ、女性に居心地のよい環境をつくったところで、企業のパフォーマンスが伴わなければ意味がありません。その視点から、「女性の活躍」を戦略的に捉えている企業に焦点を当てています。

いま日本で起きている経済の低成長や所得格差などの問題の根源は、人口構成にあります。少子高齢化が進むなか、労働者人口はますます減少し、よってGDPも減少し、社会保障費の負担は増大する。その歪みが、税収や医療介護などすべての問題に直結しているのです。

この問題にインパクトを与えることができる、直近の現実的な解決策は「女性の働く力」だと私は思います。弊社は、女性向けのライフキャリア支援サービス、企業向けの女性の活躍・定着を支援するサービスを複数運営し、広くダイバーシティソリューションを提供している会社ですが、そもそも私が起業をしたのも、その力を信じているからこそです。

ポイントは3つ。まず日本の女性の教育水準が非常に高いこと。次に、女性自身が社会で活躍したいと願っていること。3つめが人口の半分が女性であること。つまり、女性が働きたいのに働けない環境さえ改善できれば、労働力問題に多大な影響を与えられるのではないかと考えたわけです。男女が性差なく活躍できる社会を実現したい─、それが私の信念であり、弊社の目標です。

男女関係なくキャリアを阻む「壁」

男性同様にフルタイムでキャリアを構築したいと願う女性の「壁」は、ほとんどが出産・育児というライフイベントです。しかし、その先には男女関係なくキャリアを阻む大きな壁があります。親の介護です。

子どもはある程度大きくなれば手が離れますが、介護は20年続く場合もある。男女ともに何がしかの制約や負担を抱えながら社会に参加しなくてはいけない時代が、すぐそこまで来ているのです。

この問題を解決するには、「働き方のフォーマット」を増やすことが肝心です。フルコミットの正社員もいれば、時短・在宅勤務の社員もいる。フレックスタイム制、育児・介護休業制も活用できる。個人によっては週4日勤務や、午前勤務、16時退社などが許される。でないと、企業は労働力を担保できず、個人も自己実現ができなくなってしまいます。

いま成長している企業は、積極的に優秀な女性を採用しています。女性という戦力を手にし、きちんと活用できている企業は、10年後には大企業になるかもしれません。一方で、厳しいことをいえば、変革を恐れる企業はこの先淘汰されていくでしょう。もちろん、女性のキャリア問題がすべてのダイバーシティを救うとは思いませんが、いちばんクリティカルな打ち手、突破口にはなっているのではないでしょうか。

多種多様な方々が多種多様な方法で企業に参画し、価値貢献し、対価を得ていく。そんな当たり前の社会を、皆さんとともに目指していこうと思います。

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松本洋介
◎1979年、石川県生まれ。明治大学商学部在学中に学生起業を経験。卒業後の2003年、リクルートに入社。07年、トレンダーズにCOOとして入社。12年、東証マザーズ上場。14年、LiB(リブ)を設立し、代表取締役CEOに就任。日本初のハイキャリア女性向け転職サービス運営など、キャリアの多様性と選択肢を提供している。

文=堀香織 写真=岡村大輔

この記事は 「Forbes JAPAN No.31 2017年2月号(2016/12/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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