米入国禁止令で帰国不能に たった一人の社員のため立ち上がったCEO

米国への再入国を拒否されたナザニン・ジノーリ(Photo courtesy of Modjoul.)


リンクトインの投稿が広まり始めると、マルティネスの元には記者からの電話がかかってくるようになった。また、クレムソン大学の紹介により、サウスカロライナ州選出上院議員のリンゼー・グラムとティム・スコット(ともに共和党)とのコネクションもできた。

グラム議員の事務所には、ジノーリのフェイスブック投稿を読んだ地元有権者からの電子メールが殺到。マルティネスは、グラム議員との面会のために、自宅のあるワシントン州からサウスカロライナ州へと飛んだ。

グラム議員は30日、Modjoulのクレムソン支社を訪れ、ジノーリが陥っている状況について説明を受けた。またマルティネスによると、数百人の支援者がクレムソン大学などに集まったという。グラム議員は同社に集まった人々に対し、有効なビザを持ち、税金を払い、同社の事業に貢献しているジノーリは「まさに私たちがアメリカの一部として受け入れたい人間だ」と語ったと、ワシントン・ポストは伝えている。

だがこれは最初の一歩にすぎない。今回の大統領令では、入国許可の例外が認められるためには国土安全保障省の高官らの承認が必要だとされている。マルティネスは入国管理専門の弁護士を雇い例外申請の手続きを進めているが、必要書類は75ページ分にも上り、ジノーリの在学時の成績証明書や、教授や友人からの推薦書をそろえる必要がある。

「大統領令の専門家になってしまいそうだ」。マルティネスはこう語る。「私にもグーグルやマイクロソフト、スターバックスのような資金力があればいいのだが。(でも)この一度に限り、社員のためにやらなければいけない」

マルティネスは法的手続きにかかる費用を工面するため、クラウドファンディングサイト「GoFundMe(ゴーファンドミー)」で29日、「Let Naz In(ナズを入国させて)」と題したプロジェクトを立ち上げた。弁護士の前払い依頼料5,000ドルや米国行き航空券の費用などを含めた目標額は1万5,000ドル。この問題が裁判にもつれ込んだ場合の費用は未知数だ。同プロジェクトは立ち上げから3日の時点で既に目標額を達成している。

クラウドファンディングのメリットの一つは、支援者の声にあるという。「コメントを読むと思わず涙が出てしまう。ナザニンはこれを読んでいつも泣いている。たくさんの支援者やコメントを見て、希望をもらっているんだ」(マルティネス)

翻訳・編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事