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早稲田大学ビジネススクール准教授。連載[グローバル・インサイト]を執筆。


株式市場のラリーで良しとするのか、価値体系の保持なのか

トランプ大統領の就任からおよそ2週間が経っていますが、この間の様々なアップダウンはとても印象的です。

まずは株式市場ですが、就任演説の内容があまりにも一国主義的であったために、かなりネガティブな反応となりました。しかし、就任後、矢継ぎ早に出された大統領令は、予想以上に彼が大統領選で訴えた公約に忠実にみえたところから、インフラ投資、減税などの実現性の高さをはやし、ダウ平均は20,000ドルを超えてきました。

しかし、特定の国々からの米国入国を制限する大統領令が実際に実行され、空港での混乱が深まると、それを嫌気した株式市場は下げに見舞われました。

これら一連の状況に対する諸外国の反応は、例えば、日本政府は今のところ、経済的な観点からトランプ新政権のポジティブな面を極力肯定しようとしているようにみられます。

しかし、日本にとっては、経済とともに、北朝鮮及び中国を抱える東アジアの安全保障が極めて重要です。この安全保障を確固としていくためには、米国の“介入主義”を継続してもらわないといけません。

その意味では、米国の歴代政権がこれまで信奉してきた価値体系をトランプに崩されるのは日本の国益に反するわけで、トランプ新政権がその価値体系にチャレンジしてくるような局面では、日本としてはある程度、苦言を呈せるポジションを継続する必要があります。

その文脈で考えると、安倍首相の真珠湾訪問は少しナイーブ過ぎたかもしれません。オバマ前大統領の広島訪問への返礼としてのこの真珠湾訪問の意義は極めて高いのですが、真珠湾攻撃後の米国のアジアへのコミットメントは、戦後継続する米国の介入主義の象徴的な始まりだったわけです。

よって、真珠湾以降の日米関係の悲劇は水に流しましょうという空気は、米国がアジアに対して孤立主義だった時代に時計の針を戻しかねないリスクがあった気がします。まだまだ、アジアでの米国の揺るぎないプレゼンスは、特に我が国の安全保障にとっては不可欠なはずです。

移り気な金融市場と守るべき価値体系

大統領就任後から翻弄されてきた金融市場ですが、トランプが公約をそれなりに忠実の守ろうとする姿勢を感じ取り(過度な保護主義政策はもちろん株式市場にとっても悪材料となりますが)、それを所与とした上で、金融市場は政治ではない材料に注目点を移しつつあります。それは、米国でも日本でも、ファンダメンタルな企業業績です。トランプ・ラリーが始まる以前から、米国経済及び日本経済のマクロな指標の改善、それをベースにした企業業績改善期待は高まっています。

金融市場がより業績相場の傾向を今後強めていくとすれば、市場は政治が平穏であって欲しいと願うはずです。ということは、トランプ相場を牽引した財政出動、インフレ期待などよりも、トランプが選挙中の公約を愚直に行動に移しかねない保護主義(TPP離脱、NAFTAの再交渉)や米国への移民制限などが市場の弱材料として脚光を浴びかねません。

我々米国外にいる人が今求められているのは、米国から学んだ価値体系に照らして、それは違うんではないでしょうか、とたまには「No」を突きつける勇気なのかもしれません。

[樋原伸彦のグローバル・インサイト]過去記事はこちら

文=樋原伸彦

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