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「下からの変化」は日本でも始まっている

このように世界の現状を考えてくると、17年に投資家に求められるのは、慎重であること、もっと戦術的になること、中央銀行の政策に影響されすぎないよう留意することという3点です。

このうち中銀について補足すれば、市場の反応を非常に気にかけているのが各国の中銀です。中銀が経済に影響を与えるための最大の手段は金融資産の価格をコントロールすること。個人の消費を伸ばそう、企業の投資を増やそうと狙うときには金融資産の価格が上昇するよう、金融政策で誘導しますし、狙いが逆の場合も同様です。

問題は、今の中銀が市場の動きを気にしすぎるあまり、金融政策がファンダメンタルから乖離して不安定性が高まること。投資家は中銀ばかり見ていればいいというわけではありません。

一方、経営者に求められるのはイノベーティブであること、変化に向き合うこと。この変化には上からのものと下からのものがあり、上からの変化についてはすでに述べてきました。特に経済、金融、機関、政治という4つの次元における、これまでとは違う不確実性には経営者も否応なく直面させられています。

もうひとつ、下からの変化というのは、ビジネスで競合するライバルが突如、別世界から現れる点です。宿泊サービスを例にとれば、ホテルの運営や建設を手がけるヒルトンが世界で70万室を提供するまでに100年かかりました。しかし、宿泊サービス産業での経験を持たない、テクノロジー主導のスタートアップ企業であるAirbnbはホテルの運営にも建設にも携わることなく、100万室を6年で揃えた。これは「別世界からの破壊(disruptions from another world)」と私が呼んでいる現象です。

こうした破壊が起きているのは、非常に強力な4つの力が合わさりつつあるためです。力その1は、AIなどの技術的イノベーション。その2はビッグデータ。その3はテクノロジー面でのモビリティー。その4は、自分の人生についての決定権を強化しようとする個人のエンパワーメントです。

この4つの力は今、一体となっており、それは日本でも同じです。これまでとは違う不確実性に直面している。これまでの日本の強みは柔軟性と結束力でしたが、今後はこれに敏捷性を加えなくてはなりません。現在始まっている多面的イノベーションに対応するには、この3つの特性が不可欠です。

*1) ニュー・ノーマル
2008年の経済危機以降、低成長や異次元金融緩和が常態化される新しい秩序のこと。09年、米債券大手ピムコのモハメド・エラリアンCEO(当時)が提唱したことで有名に。

*2) T字路
各経済圏が低成長から脱却するべく、(1)成長率を高めて金融緩和を正常に戻すか、(2)スタグフレーションのような状況に陥るか、を迫られる「T字路的な二者択一の局面」のこと。

*3) CoCo債
偶発転換社債。株式と債券、双方の性格を持つハイブリッド証券の一種で、リーマン・ショック以降、欧州などの金融機関が自己資本増強のために発行している。


モハメド・エラリアン◎パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(ピムコ)CEO兼Co-CIO(共同最高投資責任者)を経て、ピムコの親会社であるドイツ保険会社アリアンツの首席経済顧問。また、オバマ大統領のグローバル開発諮問会議議長、国際通貨基金の副局長やハーバード大学基金を運用するハーバード・マネジメント・カンパニーCEOなど数々の要職を務めた。4年連続でフォーリン・ポリシー誌により「世界的思想家トップ100人」に選出されている。




インタビュー=谷本有香 翻訳・編集=岡田浩之 

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