裁判所への提出書類によるとカナダで100店舗以上を展開中のHMVは、8月30日までに全店舗を閉鎖する。HMVカナダは総額5,600万カナダドル(約49億円)以上の負債を抱えており、数年にわたり損失を出し続けた結果、事業の継続は難しいと判断したようだ。
2010年のHMVカナダの売上は3億1,000万ドルだったが、2016年度の売上(今年4月まで)は2億ドルを大幅に下回ると見られ、損失はさらに膨らむ見込みだ。
HMVは1921年にロンドンで設立。世界的にCD販売が減少を続ける中、現在はイギリス、香港、シンガポール等で事業を展開。英国以外では現地企業に事業を売却。米国、オーストラリア、インドや欧州の数か国にも進出していたが現在は撤退している。
HMVカナダは英国のHMVから現地企業が数年前に運営を引き継ぎ、事業の立て直しにあたっていた。しかし、その試みは失敗に終わった。カナダでの全店舗閉鎖はHMVの他の諸国での事業に直接的影響は与えないという。しかし、同社の事業は世界的に見ても決して良い状況とは言えない。
大手CDチェーンの閉鎖は音楽業界にとって悲しいニュースではあるが、近年の音楽業界のトレンドを考えると当然の流れにも見える。ここ10年でCDの売上は多くの国で二桁代の低下となり、近年はアナログレコードの人気が高まっているとは言うものの、売上の低下を補うほどのものではない。
iTunes等のデジタルダウンロード販売や、スポティファイやパンドラ等のストリーミングサービスの台頭により、CDを買い求める人口は減少が続いている。さらに、CDを買う場合でもオンラインストアやコンサート会場を選ぶ傾向が強くなり、伝統的なCD販売店は苦境に立たされている。HMVカナダの閉鎖は、伝統的なレコード販売店のビジネスモデルがもはや立ち行かなくなった事の一つの現れともみられる。