トランプ政権は1月26日、建設費用を捻出するためメキシコからの輸入品に20%の国境税を課す意向であることを明らかにした。しかし、トランプ支持者にとっては良い考えのように思えるかもしれないこの課税が、メキシコからの年間輸入額が約2,910億ドル(約33兆円)に上る米国にとって本当に意味するのは、食品価格の上昇だ。
メキシコからの輸入額が最も多いのは自動車(2015年は740億ドル)だが、米国は毎年、野菜や果物、ビール、スナック類など総額210億ドル相当の食料品を同国から輸入している。そしてその多くは、米国内よりも安価で生産されている。
トランプ支持者はツイッターなどで、「リベラルと称する愚か者たちが最近の流行りの食べ物が値上がりすると泣き言を言い、食品価格の高騰に関する国民の不安を利用している」などとコメントしている。ただ、米国がメキシコから輸入している食品は、実際にはそうした食品にはとどまらない。
米商務省によれば、国内で販売されるアボカドの78%、トマトの71%がメキシコ産だ。イチゴ、バナナ、ラズベリーも同国産が多い。砂糖は15%、テキーラは80%を同国から輸入している。
例えば、現在1個当たり約2.49ドル(約285円)で販売されているアボカドは、20%の国境税が課されれば同3ドルに値上がりする。農務省によると、15年ほど前には年間約1㎏だった米国民1人当たりのアボカドの消費量は、2014年には同3.2㎏に増加している。
関連株にも影響
こうした食料品価格の上昇に対する懸念はすでに、レストラン業界の関連株に影響を及ぼし始めている。メキシコ料理チェーンのチポトレ・メキシカン・グリル、複数のファストフード・チェーンを展開するヤム・ブランズの株価も一時下落。タコス・チェーン、デル・タコの株価は2営業日で3%下げた。
レストラン業界の購買・調達専門のコンサルタントは、「気候の影響で、(メキシコからの輸入量が多い)これらの食品を米国内で生産し、年間を通じて安定供給することは難しい。また、温室栽培は一部地域では燃料費もかさみ、コストがかかりすぎる」と指摘している。
ファストフード・チェーンなどは、食品価格の上昇に伴いメニューの価格変更を迫られることになるだろう。さらに、食料品以外にも米国は、メキシコ産のビールやテキーラも輸入しているのだ。
米国は国内の砂糖産業を保護している。その結果として国民は、世界中の大半のどの国と比べても、2倍近い値段で砂糖を購入している。米国民は最終的に、トマトもサラダもソースも、より高い値段で買わなければならなくなるだろう。アボカドもレタスも同様だ。