トーアはネット上のプライバシーとセキュリティの向上を目的に作られたソフトで、世界中のサーバとつながっている。トーアを使用すると、第三者がネットの行動を追跡することが非常に難しくなる。
トーアの運営元は「他人が追跡不可能なルートをネットの通信経路に構築し、閲覧履歴も定期的に消去している」と述べている。利用者のトラフィックは他のユーザーのそれと入り混じるかたちで構築されており、世界のユーザーが増えれば増えるほど解読は難しくなる。
トーアは元々「The Onion Router」という名前で開発が進められ、頭文字のTORがサービス名称として定着した。データはその名の通り、玉ネギの皮のように複数のレイヤーで暗号化処理されており、個々のレイヤーが連携して暗号化を強化する。これにより、個人のウェブ上の行動を突き止めることは、ほとんど不可能だ。
ただし、この暗号化によりネットの接続スピードは遅くなる。ユーザーはプライバシー保護の強化と引き換えに、少々の我慢を強いられることになる。
トーアの利用にあたっては、専用のソフトの使用が必須だ。ウィンドウズやMac、リナックスといったOSごとに無料の公式ブラウザが用意されており、それらはFirefoxをベースに開発されている。iPhoneやiPadでトーアを用いる場合はアップストアから「Onion Browser」をダウンロードする。アンドロイドユーザーの場合は「Orbot」と「Orfox」をグーグルプレイ経由でインストールする。詳しい使用法についてはトーアの公式サイトで確認可能だ。
トーアを利用するのはどういった人々なのだろうか。よく言われるのはダークウェブと呼ばれる地下サービス(Silk RoadやAlphaBaが有名)を通じて、アンダーグラウンドな取引を行う人々だ。しかし、ジャーナリストが身元を隠すために、あるいは取材先の安全を守るためにトーアを使う場合もある。
国家による厳しいインターネットの検閲が行われている諸国のネットユーザーも、検閲を回避するためにトーアを利用する。犯罪の被害者らが密かに対策を話し合う場としてもトーアは用いられている。
軍や司法機関も機密保持目的でトーアの利用を行っている。実際、トーアが最初に開発された1990年代には、諜報活動での利用を想定していた。そのトーアが今や一般の人にも広く利用され、第三者からオンラインでの活動を盗み見られることを防いでいる。