トランプは27日の大統領令で、入国審査の厳格化を進める間の暫定的な措置として、イラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンの7か国からの渡航者の米国への入国を90日間停止した。
この措置に対しては、標的とされた国々を中心とした世界各国で怒りの声が上がっている。イラン外務省は、入国禁止措置は「過激派とその支持者らに対する素晴らしい贈り物」になると批判。モハンマドジャバド・ザリフ外相もツイッターへの一連の投稿で「集団的差別はテロリスト人員増強につながる」などと非難した。
だが、トランプにとって最大の問題はイラク政府の反応かもしれない。米軍は同国第2の都市モスルで進められる対IS作戦に深く関わっている。
イラク議会の外交委員会は、トランプの大統領令に対する対抗措置を取るよう政府に要請。イラクのイスラム教シーア派指導者ムクタダ・サドル師は、「自分たちはイラクなどの国々に自由に入国する一方で、相手に対して自国への入国を禁じるのは傲慢だ」として、国内に滞在する米国人は国外に退去すべきだと主張した。
モスル奪還作戦はイラク軍が指揮を執っているとはいえ、国内の米軍関係者の行動に何らかの支障が生まれれば、対IS作戦の障害となることは避けられない。
トランプは選挙戦で、IS打倒に向けた秘密戦略を持ち合わせていると繰り返し主張してきた。あるインタビューでは「(ISを)打ち負かす絶対的な方法」があると豪語していたが、作戦の詳細は明らかにしてこなかった。ところがトランプは28日、マティス国防長官に対し「包括的なIS打倒作戦」の立案を指示しており、これまで主張していた「秘密戦略」は最初から存在しなかった可能性が高い。
入国禁止措置は理論上、他の国々にも対象が拡大される可能性がある。湾岸諸国は今のところ、この問題についてほぼ沈黙を貫いている。トランプは29日、サウジアラビア国王とアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ皇太子と電話会談する予定で、入国禁止措置の他、トランプ政権が進める在イスラエル米大使館のエルサレム移転計画について話し合われる可能性が高い。