任天堂スイッチに浮かぶ不吉なキーワード「コバヤシマル」の運命

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ニンテンドースイッチについて知れば知るほど、筆者はスタートレックに登場する「コバヤシマル」を連想してしまう。コバヤシマルとは、スタートレックの士官候補生たちが受けるトレーニング課題で、候補生らは宇宙船コバヤシマルを救助するか否かの選択を迫られる。

救助することを選ぶと、クリンゴン帝国との条約を破棄することになり、彼らから攻撃を受けて自分たちが滅ぼされてしまう。しかし、救助しないとコバヤシマルのクルーや乗客たちは死んでしまう。何れを選択しても勝利することができないという状況下で、どう対応するかがこのトレーニングでは問われる。筆者には任天堂はニンテンドースイッチで勝ち目のない戦いを挑んでいるように思えてならない。

スイッチ向けタイトルは、Wii Uのときのように任天堂ゲームが年間1〜3本程度リリースされるだろうが、サードパーティのタイトルはあまり集まらないだろう。競合のPS4やXbox Oneではサードパーティの大型タイトルが年間10本以上はリリースされ、大きな差を付けられるに違いない。

スイッチは、PS4やXbox Oneに比べてハードの性能が劣るため、ゲーム開発会社には新規タイトルを開発したり、既存タイトルを移植するインセンティブが働きにくい。スイッチがかなりの台数売れたとしても、Wiiの事例を見ればそれほど期待できない。Wiiは1億台以上も売れたが、サードパーティのタイトルは人気がそれほど高くない移植版ばかりだった。

仮にスイッチで「Mass Effect: Andromeda」や「Red Dead Redemption 2」といった超大型タイトルがリリースされたとしても、恐らく多くの人はよりハードの性能が高い他のゲーム機でプレイすることを選ぶだろう。

家庭用ゲーム機として苦戦しても、スイッチは携帯ゲーム機として勝負することもできる。しかし、携帯ゲーム機としての先行きはもっと厳しい。

任天堂はこれまで携帯ゲーム機で大成功を収めており、スイッチについても持ち運びができることを大々的にアピールするべきだという意見をよく耳にするが、そうすると3DSとカニバリ(共食い)を起こしてしまう。任天堂は3DSを存続させると明言しており、スイッチと3DSでユーザーの奪い合いをすることは避けなければならない。
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編集=上田裕資

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