アリババはここ数年、有名ブロガーやパフォーマーをECサイトのタオバオ(淘宝)に引き込む手段として活用し、ウェイボー(微博)やチャットアプリのモモ(陌陌)、動画サイトYoukuTudou(優酷土豆)といったプラットフォームに投資を続けてきた。ブロガーの中にはタオバオ内でファッションブランドを立ち上げ、数百万ドルを稼ぐ人もいる。彼らはタオバオで売られている他の商品についても、ライブストリーミングやブログで紹介する。
アリババはユーザーを自社サイトに長く滞在させるために、ソーシャルメディアとECを融合させようとしている。例えばライブストリーミングイベント中には、ネットセレブが身に着けているグッズを購入するためのリンクが表示される。アリババによると、ウェイボーで400万近いフォロワーを持つジャン・リンチャオ(張林超)が12月に行ったライブストリームは、百万人に視聴されたという。
この戦略はアリババの持続的な成長に貢献している。12月期の四半期決算で、同社のモバイルのアクティブバイヤー数(頻繁に買い物をする顧客数)は25%増加し、4億9,300万人になった。HSBCのアナリストによると、常連ユーザーは毎日6、7回タオバオのアプリを開き、一日のアプリ滞在時間は約30分。この数字は中国最大のメッセージアプリWeChatに次ぐものだ。12月期のアリババの売上高は前年同期比54%増の77億ドル(約8,800億円)に達した。
HSBCのアナリストは「アマゾンの平均的ユーザーは、アマゾンアプリを1日に6、7回も開くだろうか。アリババは自社の事業を、SNSとの相互作用でさらに拡大しようとしている」と指摘した。
ネットセレブの育成事業も開始
このビジネスはタオバオショップを通じて毎年数千万ドルを生み出すネットの有名人らにもうまみを与える。証券会社のGuotai Junan Securitiesによると、ネットセレブのジャン・ダーイー(張大奕)は2015年に4,600万ドル(約52億円)を、ジュー・チェンフイ(朱宸慧)は2,200万ドル(約25億円)の売上を生み出した。
これらの数字は、ユーチューバーの稼ぎ頭であるスウェーデンのピューディパイがユーチューブと書籍から得た収入1,500万ドル(約17億円)を上回り、中国のスター女優、ファン・ビンビン(範氷氷)の2014年の収入2,100万ドル(約24億円)をも上回る。
アリババはさらに、新たなネット有名人を発掘しようとしている。同社は昨年、ブログの書き方や画像投稿のコツを教える育成機関のルーハン(如涵)に4,600万ドル(約52億円)を出資した。関係者は「ソーシャルECはオンライン広告よりも安くて投資回収率が高い」と語った。