この文章はスイス政府観光局が地元の観光業者向けに作成したパンフレットに書かれているアドバイスだ。しかし、これはかなり偏見に基づいた見方だと言わざるを得ないだろう。
上海の若手デジタルマーケターは、中国の個人旅行者に関する記事で次のように書いた。「中国人旅行者が旅行先でも中国の料理を好むのはよく知られている。しかし、それは若い個人旅行者には当てはまらない。私を含め、周囲の友人たちはみな現地の料理を食べることを旅行の大きな目的としている。食現地の文化を理解する一助になる」
調査会社イプソスと世界観光都市連盟(WTCF)が2014年に実施した調査でも、若い中国人旅行者が、高所得層の人々と同様に欧米の食べ物を好むことが判明した。
食は故郷の友人に海外の体験を自慢し、シェアするツールでもある。WeChat等のSNSで様々な料理の写真を投稿する。旅行者の中にはメニューの写真を撮り、SNSに投稿して「何を注文すればいい?」と友人たちに尋ねる人もいる。
会食は中国文化において重要な社会的行動だ。たくさんの料理が並んだ円卓を囲む食事会は、ネットワークを広げる機会であり、料理の注文や感想を述べることで、自分の知識や能力を見せることもできる。
2010年に行われた研究調査は「食への態度」という切り口で中国人旅行者を、「オブザーバー」「ブラウザー」「参加者」の3タイプに分けた。オブザーバーは旅先の食べ物に興味があり、食事は現地文化を学ぶ機会だと考えている。ブラウザーは食に頓着せず、旅行中の料理をえり好みしない。参加者は旅先の料理に強い関心を持ち、旅行の不可欠な要素ととらえている。
中国人は旅行中にいつも中国の食べ物を欲しているのだろうか。それは人それぞれということだ。海外を旅慣れている、そして大都市に住んでいる人ほど、中国料理店を選ぶ傾向は薄まる。しかし、旅行好きの中国人旅行者でも時に無性にふるさとの味が恋しくなる時がある。
過去のある調査の参加者はこう答えた。「オーストラリアの食べ物を味わいたいが、すぐに中国の料理が恋しくなる。長旅の場合、旅先の料理を毎日食べ続けるのは難しい」