米連邦取引委員会(FTC)は先週、ウーバーが「実行不可能な高額報酬を提示し、求人を行った」との申し立てを行ない、ウーバー側は2000万ドル(約23億円)を支払うことで合意した。今回の合意により、低賃金に苦しんできたドライバーらに補償が与えられことになる。
FTCの主張によるとウーバーは公式サイト上で、ニューヨークとサンフランシスコのuberXドライバーらの年収の中央値を、それぞれ9万ドル以上と7万4,000ドルとしていた。しかし、実際は6万1000ドルと5万3000ドルだった。消費者保護団体からも抗議の声はあがり、ウーバーが掲載する求人広告の賃金は、実際よりも著しく高額になっていると述べていた。
FTCはまた、ウーバーが車を所有しないドライバーらに特別プログラムを用意し、走行距離を問わず一日あたり17ドルから車両をリースできるとしていたことも問題視した。実際の金額はこれを上回っており、リースにあたっては走行距離の制限が設けられていた。さらにウーバーはドライバーらにクレジットカードの延滞履歴を問わず、通常よりも低利の小口貸付を行うとしていたが、実際の利率は通常のローンよりも高利だったことも分かった。
FTCで消費者保護部門のディレクターを務めるJessica Richは次のように述べた。「多くの消費者がウーバーのドライバーの申し込みをしていますが、彼らが報酬額や車のリース料を欺かれたりすることは、あってはなりません。今回の決定により、多くのお金がドライバーらに支払われます」
FTCはウーバーに対し、事実に沿った報酬額を提示し、リース料やローンの適用条件を明確にするよう求めている。今回の件は最近、苦境にあえぐウーバーを、さらに窮地に追い込むことになる。ウーバーは昨年、中国事業を滴滴(ディディ・チューシン)に売却しており、ドライバーの獲得を巡ってはLyftの追い上げにも苦しんでいる。また、利益率ではウーバーよりもLyftが上回るというデータも公開されている。
数十億ドルを注ぎ世界的な急成長を遂げたウーバーにとって、今回の2000万ドルは、はした金に過ぎないのかもしれない。しかし、FTCの今回の申し立ては、ウーバーが今後、ドライバーや顧客、さらには投資家らにより良いビジネスモデルを提示していく必要があることを示している。