CARによれば、米国がこの協定から離脱しても、現在メキシコ国内にある自動車製造業の雇用が全て米国に戻ると単純には考えられない。メキシコから、より低コストで済む中国やその他のアジアの国に移ってしまう可能性もある。
一方、米国には国内の既存工場がすでにフル稼働に近い状態にあるという問題点がある。コンサルティング会社オリバー・ワイマンによれば、「トランプの方針によって全ての仕事が米国内に取り戻されるなら、自動車メーカー各社は工場を新設しなければならない…多額のコストがかかる」
また、懲罰的な関税を課すというトランプのもう一つの主張についてCARは、メキシコからの輸入車に35%の関税を課せば、同国の生産台数は約45万台減少し、北米では米国を含めて約6,700人の雇用が奪われると予想する。
さらに、メキシコで製造される自動車部品の価格が上昇すれば、米国でもサプライチェーン全体にその影響が波及。組立工場と部品工場では合わせて3万1,000人が職を失うとみられている。
他に得策がある
ブルッキングス研究所は、「国産」なら全ての製品が安価で販売できるというわけではないと指摘する。
「その製品が輸入されていたのなら、それはそもそも米国メーカーに十分な競争力がないからだ。つまり、その製品を国内で生産すれば価格は上昇する」
さらに、外国企業との競争がないことは一層の価格上昇を招く可能性がある。貿易相手国との関係が脅かされることは、米国の雇用を危険にさらすことになるのだ。
トランプにとって賢明な策は(保護主義的な政策よりも)、先端製造業やサービス部門などで新たに仕事に就くことができるよう、米国の労働者らに教育の機会を提供することだ。