答えは簡単だ。顔立ちの美しさや国際的な活躍だけでは、象徴的存在、アイコンにはなれないからだ。この日のメラニアは、確かに驚くほど美しかった。米国のファション業界に君臨するラルフ・ローレンがデザインした淡いブルーのスーツに合わせ、全身を同色で統一したファッションは、気品と優雅さを表していた。
そして、このメラニアのドレスは、彼女のために働くトップクラスのデザイナーがいるのかという議論に終止符を打ったといえる。ラルフ・ローレンのほか、祝賀舞踏会で着るドレスを手掛けるのではとうわさされたカール・ラガーフェルドは、いずれもファッション業界の大御所だ。
トランプ新政権を支持しないデザイナーのマーク・ジェイコブスやトム・フォードなどは、メラニアのためには働かないと明言してきたが、そうした議論は当初から、空騒ぎにすぎなかった。トランプ夫妻には、メラニアが大統領夫人にふさわしいと考える服で向こう4年間、ホワイトハウスのクローゼットを埋め尽くすだけの資金があるのだ。
微妙な選択
就任式の日のメラニアのドレスは、「アイコン」としてのステータスの確立を予想させるものではない。それは、56年前の同じ日に大統領夫人として、オレグ・カッシーニがデザインしたドレスをまとったジャクリーン・ケネディを(恐らく意図的に)思い出させるものだったからだ。
大統領夫人としての“第一声”でメラニアは、ミシェルが登場するまでほぼ間違いなく、ファションにおいて最大の影響力を持っていた元大統領夫人をまねる決断を下した。それは、安全な選択といえる一方で、同時に疑問の余地を残す決定でもあった。