北欧に暮らすペルトラには、熱帯の農業に関する知識はなかったが、倫理的に作られたローチョコレートが成功する確信があった。1年近くかけて原材料や製造に必要な機械、工場スペースを吟味し、2013年にヘルシンキでチョコレート作りを開始。資金は、15,000ユーロ(約184万円)の補助金と35,000ユーロ(約427万円)のローンをフィンランド政府から獲得し、残りは自身の貯金でまかなった。「経済的に苦しい時は、チョコレートを食べてしのいだ。最高のチョコレートをね」と冗談めかして振り返る。
ペルトラの野望は「世界一のチョコレートを作ること」だ。彼の言う世界一とは、大手ブランドのチョコレートとは異なる「健康促進作用があり、透明性が高く、道徳的で、エコで、びっくりするほど美味しくて、見た目も素晴らしい、全てを兼ね備えたチョコレート」だ。
創業から3年が経ち、ビジネスパートナーが2人増えた。売上は100万ユーロ(約1億2,300万円)を超える。利益の大半を事業拡大に費やしてきたおかげで会社は急成長し、2016年にはスカンジナビア半島を飛び出して米国、英国、香港でも発売を開始した。
社会をより良くするという当初の企業理念は変わらない。現在、同社には10人のフルタイム従業員と10人のパートタイム従業員がいるが、彼らはそれぞれ雇用に不利な条件を持つ人々だ。「他で働くことが難しい人たちを雇っている。私たちの職場ではスタッフ全員が平等だ」とペルトラは言う。
ペルトラはまた、今年3月にペルー、ハイチ、ニカラグア、コンゴのカカオ生産者を訪ねる予定だ。そして地元のヘルシンキでは、新しい工場を作る計画を進めている。新工場ではジムとヨガスタジオを併設し、使用者の運動エネルギーをチョコレート作りに使う電気に変えることで、健康促進と持続可能性の両立を図るという。
体にいい原材料を使い、多様な人材を雇い、生産者と直接取引する公平なサプライチェーンを確立し、包装には最小限のリサイクル素材を使うグーディオは、伝統的なビジネスモデルからの脱却を実践している。
「近い将来、食べ物が病気を引き起こすものではなく、健康を促すものになるように、食品業界と消費の構造を根本的に変えたい」とペルトラは話す。「そのためには、より多くの企業が利益を追求するだけでなく、消費者の健康を考えるべきだ」