ビジネス

2017.02.06 15:15

5週間でスタートアップを「大改造」 ヘルシンキの起業支援キャンプ

パヌ・パリヤッカ/Panu Paljakka(25) 「スタートアップ・サウナ」のCEOとしてプログラムを率いる。アアルト大学に在学中で、専攻は数学と物理学。2014年には学生起業団体「アアルトES」の副委員を務めた(写真はサウナを模して作られた会議室で撮影)。


――とても中身の濃いプログラムのようですが、ほかのアクセラレーターと比べると、「5週間」というのはかなり短いのでは?(※17年春季プログラムより7週間に拡大予定)
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ええ、普通は3か月程度が一般的ですよね。でもそういうプログラムはたいてい参加企業に出資して、株式をシェアするタイプです。

僕たちは5週間の間に、「ホッケー・スティック」のような(=右肩上がりの)急成長を期待していません。プログラムをこなすだけでも十分忙しいうえ、すでに事業を立ち上げている企業の場合は、通常の業務にも時間をとられます。

プログラムの期間中はいろんな人から意見やアドバイス、フィードバックをもらって、ビジネスモデルをもう一度練り直す必要性に迫られたりもします。だから僕たちの理想としては、5週間で「何をすべきか」「ユーザーはだれか」「どう実現するのか」などのビジョンを明確にして、プログラムが終わったら、すぐに実行に移せるようにすることです。
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ほかのアクセラレーターは一般にもっと時間的余裕があるので、メンターが参加者の手を引っ張りながら、ビジネスの「実行」を手伝います。でも僕らの場合は5週間という短期間に、ものすごいスピードで課題や解決法を伝えていきます。それを実行するかしないかは参加企業次第というわけです。

――卒業後に参加企業がよく直面する問題にはどういったものがあるのでしょうか?


プログラムの期間中、「顧客開発」をまったくしていなかったことに気づいて、終わってから急いでそれに取り組むという企業がいつも何社か出てきますね。ですが、そういう場合、もうすでに自分たちの「想像」の世界に深く入りすぎていて、ユーザーが一人もいないことがあります。そういう企業はプログラムを卒業してから1年から1年半くらいかけて、「プロダクト・マーケット・フィット」(製品と市場の適合性)をどうやって見つけるか、格闘することになるようです。

――最後に、なぜ「スタートアップ・サウナ」という名前になったのか教えてください。

サウナはとてもフィンランド的なものということもありますが、僕らのコーチングのやり方も関係しています。僕らは「メンター」ではなく、「コーチ」という言葉を使っています。メンターは参加者の背中を叩いて気分を良くさせてくれる人。でもコーチは正直に問題点を浮き彫りにして、ときには辛い話もしなきゃいけない。でもそれが参加者のためになるから、そうするんです。ものすごくストレートなやり方で、議論が「熱」を帯びることもある。だから「サウナ」なんです。

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Startup Sauna/スタートアップ・サウナ
北欧を代表するアクセラレーター・プログラム。アアルト大学のキャンパス内にあり、学生NPOが運営する。7週間で「選択と集中」「顧客開発」「市場攻略」「チームと企業文化」「資金集め」など経営上のトピックに取り組む。2010年にプログラム開始後、200社以上が卒業した。


*「フォーブス ジャパン」2017年3月号(1月25日発売)では、フィンランドのスタートアップ躍進の謎に迫るロングルポ「『起業立国』フィンランドの素顔」を掲載中。

Interview and Photographs by Yasushi Masutani

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