ビジネス

2017.02.06

5週間でスタートアップを「大改造」 ヘルシンキの起業支援キャンプ

パヌ・パリヤッカ/Panu Paljakka(25) 「スタートアップ・サウナ」のCEOとしてプログラムを率いる。アアルト大学に在学中で、専攻は数学と物理学。2014年には学生起業団体「アアルトES」の副委員を務めた(写真はサウナを模して作られた会議室で撮影)。


――スタートアップ・サウナには毎回、どれくらいの数の企業が応募してきますか?

プログラムは年に2回、春と秋に開催しています。今年は春・秋を合わせて、1,500社から応募がありました。昨年は1,100社でしたね。実際に参加するのは毎回だいたい15社くらいです。

ちなみに、第1回目のときは19社が応募して、11社が参加しました(笑)。

――とても大きな変化ですね。どうしてそんなに急激に人気が出たのでしょう?

最初に応募した19社はいずれもアアルト大学に関係した、地元のスタートアップでした。

でも第1回目のプログラムが終わったあと、運営する学生たちは「ちょっと待てよ、もっと大きなインパクトを与えられるんじゃないか」と考えたんです。だって、タリン(隣国エストニアの首都)まではフェリーでたったの2時間。だったら、試しにタリンに行ってみて、どんなスタートアップがあるのかを見て、彼らも興味を持つかどうか調べてみようと思ったんです。

そしてタリンに行ったら、今度はリガ(ラトビアの首都)がそこから車で2時間だから、リガも行けるじゃないかと。そうやって活動エリアを徐々に広げていった感じです。

面白いと思ったのは、僕たちが主にターゲットとしている地域――北欧、バルト三国、東欧、ロシア――は、いずれもスタートアップの状況がかなり似通っているという点です。つまり、テクノロジーやプロダクト志向が強い反面、ビジネス志向が弱い。だから僕たちの仕事は、そういうプロダクト・マインドの強い人たちを見つけて、ビジネスサイドで手助けすることです。

スタートアップによくあるのは、何か問題があって、それを解決するテクノロジーを知っているから、プロダクトを作ってしまったというパターン。そしてプロダクトを作ったあとに、ユーザーが誰で、どんなふうに使うのかを考え始めます。でも悲しいことに多くの場合、ユーザーは誰もいなくて、時間の無駄で終わってしまう。「自分たちが作れるから作った」だけなんです。

だからこのプログラムを通して、コーチたちは参加者の意識を「顧客第一」という方向に変えようとしています。


スタートアップ・イベント「スラッシュ」に出場したスタートアップ・サウナ(2016年秋季)の参加企業。
各社が賞金を競ってコンテストに出場した(写真中央後方はCEOのパヌ)。


――ヨーロッパにはほかにもアクセラレーターがたくさんあります。なぜ多くの企業がスタートアップ・サウナを選んでいると思いますか?

いくつか理由があると思いますが、一つは、僕たちがわりと長い間やってきていることがあると思います。スタートアップ・サウナが始まってから7年が経ちますが、ヨーロッパのアクセラレーターでそれだけ長くやっているところはあまりありません。

また僕たちは5~6年前からモスクワやサンクトペテルブルク、タリン、リガなど各地でイベントを開いているので、業界内でわりと知名度もあります。そういった都市から参加した企業がプログラムの終了後に自分たちの地元に戻って、評判を広めてくれているというのもあります。

あと、僕らは地元の都市だけにフォーカスしていません。ほかのアクセラレーターは国や都市にフォーカスしている場合があります。でも僕らはグローバルでやっていて、フィンランドだけでなく、この地域(北欧、バルト三国、東欧、ロシア)で一番になりたいと思っています。

実際に結果も出しています。僕らはこの地域では最良のアクセラレーターの一つと見なされるようになりました。だから起業家の関心が高いし、毎年成長もできているのだと思います。
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Interview and Photographs by Yasushi Masutani

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