中国の自動車メーカーの米国進出としては、2007年に奇瑞汽車(チェリー自動車)が米国での販売を計画したが、ディーラーが集まらずに頓挫した経緯もある。吉利汽車も2008年に米国で7,500ドルの車両を発売しようとしたが、その際は失敗に終わっていた。
その2年後に同社は経営不振に喘ぐボルボをフォードから18億ドルで買収。その後、110億ドル(約1兆1,320万円)を投じ、ボルボの立て直しに着手してきた。エンジニアリングに関するボルボのノウハウと、意欲あるチームを手に入れた吉利が買収後に発表したモデルは、概して好評を博している。
吉利汽車とボルボのジョイント・ベンチャーは現在、成都市と大慶市に工場を持ち、米国向けの車両もそこで生産される予定だ。中国で生産されたボルボのS60Lモデルの米国輸出は、来年の末から始動する。同時にロシア向けにXC90 SUVモデルの輸出も始まる予定だ。
ボルボの中国での売上は、高級車市場の盛り上がりを受けて堅調だ。2014年にボルボは中国で9万台を販売し、前年度から47%の上昇となった。中国はボルボにとって今や世界最大の市場となり、売上規模で米国を突破した。同社の中国での生産可能台数は、年間25万台とされている。
吉利汽車の会長、Li Shufuは長年のボルボへの投資がようやく中国で実を結びつつあるタイミングで、米国への再進出を決定した。米国人の消費者にも馴染み深いボルボのブランド力を利用して、吉利汽車は米国市場にチャレンジする。ボルボの車両は米国の厳しい自動車基準にも既に適合済みというメリットもある。
中国製の車を米国で販売するというアメリカンドリームが、吉利汽車によりようやく実現されようとしている。