サラリーマン社長に必要な3つのこと/東急電鉄 野本弘文社長

東京急行電鉄・野本弘文社長(写真=円山正史)


─2つの制度を通じて東急電鉄全体がどのように発展していくことを期待されているのでしょうか。

まずは、支援した案のなかから大きな事業が生まれてきてほしい。1つ生まれると、次々と卵が続いていくと思います。私どもが今手がけている事業も、最初はすべて小さいところからスタートして大きくなりました。東急グループの拠点である渋谷は、もともとベンチャー企業が多く集まる街でもあり、小さくても勢いのある彼らと共に発展してきた。そういう意味で、彼らが存分に活躍できるステージをつくるのが、我々の仕事です。舞台をつくるのは東急でも、演者は社内でも社外でも、あるいは海外から来ていただくお客さんであってもいい。外部の方たちが我々と組み合わさることで、より魅力的なステージができ上がることだって、あるかもしれない。

人間には得手不得手がありますから、全員が起業家マインドを持つ必要はないんです。水脈を見つける人ばかりではなく、井戸を掘る人も必要ですし、水が出てきたら、それを加工して売る人も必要。そういう様々な能力を組み合わせて動くのが組織であり、会社です。

東急グループが持つ沿線の集積バリュー。これは唯一無二の財産ですから、ここは大事にしていかなくてはいけない。そのうえで、どうすればそのバリューを時代に応じて高めていけるのか。部分最適ではなく、全体最適で考えられる人材を発掘したり、育成したりできる仕組みに育ってくれればいいと思っています。


東急アクセラレートプログラム(TAP)

東急線沿線の生活利便性を高める新規事業の創出と、渋谷を中心としたベンチャー企業の持続的な成長を支えるエコシステムの構築を目的に実施された。2015年11月、最終選考会が行われ、東急賞には人工知能で 街を最適化するABEJA。渋谷賞にはIoT情報配信プラットフォーム「スマートプレート」のアクアビットスパイラルズ。二子賞には地域内エネルギー循環のサステイナブルエネルギー開発が選出された。



野本弘文◎東京急行電鉄(東急電鉄)代表取締役社長。1947年福岡県生まれ。71年早稲田大学理工学部卒業。同年、東急電鉄入社。2001年事業戦略推進本部メディア事業室長、04年イッツ・コミュニケーションズ(系列ケーブルテレビ会社)社長、07年東急電鉄取締役を経て、11年4月から現職。

インタビュー=西口尚宏、構成=曲沼美恵

この記事は 「Forbes JAPAN No.30 2017年1月号(2016/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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