中国のアリババとテンセントは先週、プレイヤーが移動しながらバーチャルのお年玉を集める、位置情報を使った拡張現実(AR)ゲームをそれぞれ発表した。プレイヤーはスマホのカメラで物体をスキャンして、そこにお年玉を隠した後、それを見つけるヒントを友人たちに送る仕組みだ。
ゲームは世界中でヒットしたポケモンGOの“中国春節バージョン”といったところだ。しかし、プレイヤーが集めるのはピカチュウではなく、別のプレイヤーが事前に決済アプリから支払ったお年玉なのだ。
両社のゲームはアリババの決済アプリ「アリペイ」か、テンセントのインスタントメッセージサービス「QQ」でプレイできる。紅包を入手するためのヒントを公開するか、SNSでつながっている友人に限定するかは、ユーザー自身が選べる。このゲームは旧暦の元旦にあたる1月28日にスタートし、中国外でも利用できる。
30億円以上のお年玉をAR空間に配置
ユーザーにとっては、SNSでの交流だけでなく、誰かが仕込んだお年玉そのものがゲームに参加する動機となるだろう。アリババの金融子会社でアリペイを運営するアント・フィナンシャルは先週、ARゲームで隠されるお年玉が約2,900万ドル(約33億円)になるとの見通しを発表した。対抗するテンセントも、4,300万ドル(約49億円)以上のお年玉が設置されると発表した。
企業はお年玉の伝統を利用し、モバイル決済サービスを普及させようとしている。アリババは昨年、アリペイの決済アプリのプロモーションとして、デジタルお年玉3,900万ドル(約47億円)を配った。一方、テンセントのWeChat上で送られたバーチャルお年玉は80億件に達した。コンサルティング企業のZ-Ben Advisorによると、WeChatの2014年のお年玉キャンペーンには最大2億人のユーザーが参加したという。
外国ブランドもゲームに参加し、顧客を店舗に誘導するためにショップ内にお年玉を置く。コカ・コーラ、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、ユニクロなど20ブランド以上が、計430万ドル(約5億円)分のお年玉をショップに設置する予定だ。
また、テンセントやアリババはゲームが政府の検閲をパスするよう注意を払った。アント・フィナンシャルは政府機関や軍事施設等がゲームの地図に表示されないようにし、開発にあたって政府関係部門と協議した。
中国当局は先週、位置情報を利用したARゲームを当面承認しない方針を表明した。ポケモンGOの中国でのリリースについても、“地理情報の安全への脅威”“消費者の安全”など潜在的なリスクを審査していることを明かした。