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2017.01.18

ハリウッドから華麗なる転身、「彼ら」が敏腕投資家になれた理由

2016年にサウンド・ベンチャーズを共同創業したアシュトン・カッチャーとガイ・オセアリー (photograph by Tim Pannell)


カッチャーは09年に、マイクロソフトによる買収前のスカイプへ投資。この100万ドルの投資の価値が4倍になったことで、ベンチャー投資にすっかりはまってしまう。儲けることより、サンフランシスコの“新しい友人”たちを感心させられたことが彼には刺激的だった。
 
オセアリーもカッチャーと似たキャリアチェンジの経験者だ。彼は8歳でロサンゼルスに移住し、ビバリーヒルズ高校に進学。そこでマイナーヒップホップグループのマネジャーを務め、フレディ・ディマンらハリウッドの実力者の子供と交流を持つ。その後は、ディマンがマドンナと共同設立したレコード会社「マーベリック・レコーズ」に入り、スカウトから会長職までのぼり詰めた。

「今も昔もやってることは同じ。才能を見つけ出して、彼らの音楽やビジョンを売り込む手伝いをしている」
 
やがて“ベンチャー投資病”にかかったオセアリーだが、00年に相場の落ち込みでインキュベーター「アイディアラボ」への何百万ドルの出資金を失うなど、27歳の若さで“貴重な教訓”を学ぶ。その後はマドンナのマネジャー業を引き継ぎ、世界ツアーで総額6億ドルの収益をあげる活躍をみせるが、ベンチャー投資を諦められず、08年にココナツウォーターを販売する「ビタココ」へ120万ドルを投資。2,800万ドルだった企業価値は、見事6億6,400万ドルになった。続いて、グルーポンへの投資でも大成功を収める。
 
そうしてベンチャー投資に深く関わり始めたオセアリーは、シリコンバレーには「エンターテインメント業界からの投資家」が少ないことに気づいた。

「私たちのコミュニティからベンチャー投資に参加していたのは一人だけ。しかも、私よりはるかにうまくやっていました。それこそ、アシュトンだったのです」
 
オセアリーの提案でタッグを組んだ2人は、さらに億万長者のバークルをメンバーに加え、10年に「Aグレード・インベストメンツ」を設立。同社の投資額は、5万〜10万ドル規模から始まり、次第に数百万ドルに上る規模にまで成長した。
 
Aグレードの投資基準は、1. 一緒に仕事をしたいと思わせる魅力的な創業者、2. 時間の節約や豊かな過ごし方を実現するという問題解決型のミッション、3. Aグレードが関わることで強化されるビジネスモデルーの3つだ。

「シリコンバレーの夢想家たちの言葉をマスターした、天然ボケのイケメン」
 
ニューヨーク・タイムズがカッチャーをそう呼んだように、この頃には彼のキャリアチェンジが注目を集め始める。しかし、そこでは“セレブ投資家”として、レディー・ガガなどとひとくくりにされて取り上げられることが多かった。

「最近は“観光客”的なセレブ投資家が増えているんです」と億万長者の投資家クリス・サッカは言う。

「彼らは分け前を狙って付近をうろつくものの、業界に何の価値ももたらしません。一方、アシュトンはもう8年以上にわたり、毎日関わっています」
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ザック・オマリー・グリーンバーグ = 文 木村理恵 = 翻訳 山本隆太郎 = 編集

この記事は 「Forbes JAPAN No.30 2017年1月号(2016/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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