サンフランシスコ本拠の同社は顧客宛のEメールで「製造資金の調達が行なえず製造を停止した」と述べた。情報筋によると同社は、2015年12月時点で1,500万ドルの資金調達を行なっていたが、さらに1,500万ドルを調達しようとしていた。
共同創業者のHenry BradlowとAntoine Balaresqueは「非常に心苦しい結果となったが会社を解散し、顧客らには返金に応じる」と述べた。
Lilyの経営破綻はコンシューマー向けドローン業界の厳しさの一例と言える。昨年後半には、GoProが一年以上もかけてリリースしたクアッドコプター型ドローンのKarmaがバッテリートラブルで墜落し、リコールに踏み切った。雑誌「Wired」の元編集長のクリス・アンダーソンが指揮する気鋭のドローンメーカー「3Dロボティクス」も、ハイエンドモデルのSoloの売上不振に苦しみ、業務アプリケーション向けに事業転換を行った。
Lilyが最初に注目を集めたのは2015年5月のこと。自律飛行するドローンがスノーボーダーの後を追跡し、ユーザーを自撮りするプロモーション動画が公開された。動画の再生回数は1,200万回にも及び、空中に放り投げられたドローンが自らの意思で空を飛び、ユーザーを追跡する様子は当時、前代未聞の機能として話題を呼んだ。
Lilyの広報担当者はフォーブスの取材に昨年1月に応え、動画が複数回の撮影で撮影されたことや、製品リリースまでにはさらなる改善が必要であることを明かしていた。ガーディアン等のメディアは、製品はまだ試作段階であり、プロモーション動画で示されるような機能は実現できていないと指摘していた。
一方でプロモ動画は大きな注目を集め、2016年初頭までに6万台分の予約注文を集め、受注額は3400万ドルに及んだ。Lilyは当初、16年2月の製品リリースを予定していたが、その後夏に延期。さらに8月になって公式ブログで「2017年の早期に延期する」としていた。そして今、Lilyが離陸する見込みはなくなったのだ。
24歳の創業者が抱いていた夢
「支援して頂いた方々には心からお礼を言いたい。状況が困難を極める中で、ここまで続けてこられたのはコミュニティのみんなのサポートがあったからこそだ」と創業者はブログで綴っている。
Lilyは予約注文を行った顧客らに今後60日以内に返金を行なうと述べているが、同社が一体どれほどの資金を口座に蓄えているかは明らかではない。また、出資元のSV AngelやSpark Capitalに資金が返金されるかどうかも不明だ。
2年前のフォーブスの取材で、当時24歳のBalaresqueは「カメラ市場は巨大だ。僕らの5年後の目標は、飛ばないカメラを全て時代遅れにすることだ」と雄弁に語っていた。