ビジネス

2017.01.13

延期もツイートも計算尽くか、当選64日後「異例の遅さ」のトランプ初会見

Action Sports Photography / Shutterstock, Inc.


公人の記者会見は、それに臨む人自身がコントロールがしづらい環境で質問に答えなければならないため、より国民に対しての説明責任が求められるところにその必要性がある。

当初トランプ氏は記者会見を12月15日とし、実業家が大統領に就任することで懸念される“利益相反”の問題を説明する意向を示していたのだが、直前になってキャンセルをした。そして、その「利益相反」の説明をするかについては定かでないまま、ツイッターという一方的な発信で会見延期を発表した経緯も異例だ。

記者会見の場では、ビジネスは2人の息子に全て引き継ぐとしただけで、もっとも手っ取り早く、かつ確実に“利益相反”を示せる「自身の保有株全てを第三者へ売却する」などの実質的な解決方法については触れないままとなった。

全体的には、会見直前にリーク情報としてメディアに流れた選挙期間中の「不名誉な情報」に終始し、そちらの話題で大荒れとなった。それでも質問が“利益相反”に及ぶと米国の貿易赤字を取り上げ、批判の矛先を国外に向けるよう何とかして焦点をずらそうとする意図も見受けられた。内政が行き詰った時は外政へとすり替えるのは為政者の常套手段でもあり、ある意味わかりやすい。

「不名誉な情報」のリーク元とされたCNNの記者に対してケンカ腰であったことが会見のハイライトとして伝わってくるが、トランプ氏にとっては、聴衆や国民の本来の関心を煙にまき、核心に触れずに済んだということで、実は渡りに舟となった部分もあったといえよう。

今後そうした誤魔化しが聞くかどうかは別としても、記者会見の延期と実際の会見を通じて“利益相反”の説明責任が問われない状況に自ら仕向けたとも言える。

往々にしてトランプ氏のツイートは「幼稚」で「行き当りばったり」で「感情的」と切り捨てられるが、実は綿密な計算の上での用意周到な発信や発言なのではなかろうかと感じさせる初会見でもあった。それだけに厄介であるのも間違いない。

記者会見の本来の目的であるはずの“利益相反”をいかに追求するのか、米メディアの真骨頂を期待したい。

文=岩本 沙弓

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