VWは2015年、排出量を少なく見せるための違法ソフトウエアを搭載した車を世界全体で約1,100万台(うち米国では約60万台)を販売したことを認めた。この不正ソフトにより、同社の車は米当局が定める環境基準の最大40倍に達する窒素酸化物(NOx)を排出していた。
米司法省と税関・国境取締局との間で進められている協議でVWは、すでに約175億ドルで合意した民事に次いで、刑事でも自社の責任を認めることになる。同社の監査役会と取締役会は11日までに会合を開き、和解案を承認する見通しだという。和解案はその後、米当局の承認も得る必要がある。
米国人の寛大さが「頼みの綱」
刑事責任を認めた上での米当局との和解は、VW史上最大のスキャンダルの収束に向けた大きな一歩となる。だが、同社は今後も、米国民の支持を取り戻すための努力を続けなければならない。
VW北米法人のヒンリッヒ・ウェブケン社長兼最高経営責任者(CEO)はあるインタビューで、30年以上前に交換留学生として過ごした高校生時代に「米国人の寛容さを知った」と語る。
「米国人は他人に二度目のチャンスを与える。彼らのそういうところが大好きだ」というウェブケンは、「VWはその第二のチャンスをつかみたいと考えている」と述べている(ドイツでは、そうした機会は必ずしも与えられないという)。
VWは排ガス不正の問題が発覚した2015年後半以降、米国内でのディーゼル車の販売を禁止されている。これにより、同社の米事業は25%縮小した。それでも、「ゴルフ」や「パサート」などのガソリン車の人気は衰えることがなく、同年の販売台数は2.6%減にとどまった。どうやら米国人は、本当に寛大なようだ。