そして、運び込まれた現地の病院での大手術によって、その男性は、九死に一生を得たが、残念ながら、左足を切断する結果になってしまった。
意識が回復し、左足を失ったことを知ったその男性は、一瞬のミスによって迎えた人生の明暗に、ひとり、病院のベッドの上で嘆き悲しんでいた。
しかし、そこに日本から駆けつけてきた、その男性の妻は、病室に入るなり、夫を抱きしめ、何と言ったか。
あなた、良かったわね!
命は助かった! 右足は残ったじゃない!
この実話は、我々に、大切なことを教えてくれる。
我々の人生の、本当の「分かれ道」は、どこにあるか。
それは、どのような出来事が起こったかに、あるのではない。
起こってしまった出来事を、どう解釈するか。
その解釈にこそ、ある。
いま、書店に並ぶ本や雑誌を見れば、「成功」という文字や、「勝利」という文字が躍っている。「いかにして成功者になるか」や「いかにして勝利者になるか」というメッセージが溢れている。
しかし、人生の真実を、ありのままに見つめるならば、「成功」の陰には、必ず「失敗」があり、「勝利」の陰には、必ず「敗北」がある。
されば、我々の人生において、失敗や敗北、挫折や喪失、そして、事故や病気は、決して避けることはできない。
では、人間の「真の強さ」とは何か。
それは、決して「必ず成功する力」や「必ず勝利する力」のことではない。
人間の真の強さとは、冒頭の話の妻の姿にある。
すなわち、人生において、いかなる出来事があろうとも、その「解釈」を過たない力。否定的な出来事が起ころうとも、それを肯定的に解釈する「魂の力」。その「解釈力」と呼ぶべき力であろう。