ベントレー初のSUV「ベンテイガ」の魅力[クルマの名鑑vol.5]

ベントレー初のSUV「ベンテイガ」(photograph by Tsukuru Asada (secession) )

優雅に街を走るベントレー「ベンテイガ」。その気品ある姿には革新への勇気がひそむ。

英国を代表する高級車メーカーのなかでも、ベントレーほど、近年の復活に成功したブランドはない。英国経済の悪化を受けて、どの英国車メーカーも厳しい時期を過ごした。2000年に前後して、海外の資本を受け入れて以降、着々と復活の道を歩んでいる。ただ唯一、ベントレーだけが年産1万台を超えるまでに成長している点は特筆に値する。

復活の最大の理由は、W12という個性的なパワートレインを搭載し、なおかつ、2,000万円前後という“バリュー”な価格設定を実現した点にある。

一般庶民の視点からすれば、田舎なら家でも買える価格だが、“超”が付くラグジュアリー・ブランドの12気筒エンジンを積んだモデルの中では、破格に手頃なプライスタグなのも事実だ。さらに、スランとしたルーフラインから想像する以上に、室内のユーティリティも高い。

フロントに積まれるW12エンジンは、V型エンジンと比べると短いため、室内空間にスペースを割くことができるのだ。もちろん、最上級のラグジュアリーにふさわしい流麗なスタイリングも、支持される理由の一つだ。

そのベントレーが初のSUV「ベンテイガ」を発売した。カナリア諸島の岩山とシベリアのツンドラからの造語で、地球上のあらゆる過酷な道を走破するという意味が込められる。

実際、その力強いスタイリングを見れば、車名に納得できる。室内に目を向ければ、英国のハンティングジャケット風のキルトが施されたシートや、ウッドとメタルで装飾されたパネル類といった細部にまで、見事に英国流が取り入れられている。もちろん、見た目に違わず、走りもパワフルだ。

SUVというチャレンジングな分野にあえて打って出る勇気こそが、伝統的なブランドによる革新であり、それがベントレーがさらなる躍進を遂げる秘訣となるだろう。

オーダーメードこそ、高級車の愉しみ

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ベントレーの特注部門であるマリナーの歴史は古く、馬具メーカーとして生まれた16世紀まで遡る。18世紀にはロイヤル・メールの馬車のボディを作るまでの信頼を得ており、19世紀後半には自動車のための別注ボディを仕立てるコーチビルダーに転じ、美しさと確かさで高い評価を得た。

当時の自動車メーカーはシャシーのみを生産し、その上に架装するボディは別注する仕組みだったから、各国の富裕層は競うように有名コーチビルダーに依頼して美しいクルマを仕立て上げた。

60年代にグループ傘下となり、マリナーが紡いできたオーダーメイドの伝統はベントレーの中で受け継がれることになる。好みの素材やステッチを選ぶに留まらず、例えば、フライフィッシングのための装備を美しく収納できる仕様などのプロトタイプを提案し顧客の想像力を刺激する。そうした自分らしいオーダーメイドも、ハイエンド・ブランドの楽しみ方である。

ベンテイガ DATA

駆動形式:フルタイム4輪駆動
全長:5,150mm
全幅:1,995mm
全高:1,755mm
最高速度:301km/h
価格:26,950,000円(税込)
問い合わせ:ベントレー コール 0120-97-7797

text by Yumi Kawabata edit by Tsuzumi Aoyama

この記事は 「Forbes JAPAN No.30 2017年1月号(2016/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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