「感性」を学習するAIで、ライフスタイルのドラえもんを目指す!

慶應イノベーション・イニシアティブ代表取締役社長 山岸広太郎とカラフル・ボード代表取締役社長 渡辺祐樹

渡辺祐樹が2011年に創業したカラフル・ボードは、ユーザーの嗜好を解析し、一人ひとりの“感性”を学習するパーソナルAI「SENSY」を開発するスタートアップだ。好みやトレンドからアイテムやコーディネートを提案する「ファッション」、味覚に合うワインをセレクトする「食」の2分野でサービスを展開。来年度には、海外展開を予定する。

山岸広太郎がCEOを務める慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)は、慶應義塾大学の研究成果を活用したベンチャー企業の投資育成を目的としたベンチャーキャピタル。カラフル・ボードは16年7月に組成した1号ファンド(総額約45億円)による初の投資案件だ。


山岸:出会いは16年3月。慶応SFCの研究コンソーシアム「FINE」主催のイベントです。渡辺さんの講演は、「同じようなベンチャーは、いっぱいあるな」というのが正直な印象でした。

しかし、理工学部の同窓会研究教育奨励基金による「矢上賞(起業支援)」の受賞後、KIIの木下秀一が渡辺さんを訪問。ジャフコでキャピタリストとして24年のキャリアがある木下が「成功の見込みは十分」と太鼓判を押し、投資へ動き出しました。

渡辺:相吉英太郎名誉教授との共同研究や、OBにメンターや株主になってもらうなど、慶応にはお世話になってきました。研究者志望から、技術で社会問題を解決する起業家を志したのも、慶応のアントレプレナー養成寄付講座がきっかけ。慶応との連携をより深められる上、グリーで事業を成功させた“起業家出身の投資家”の山岸さんが参加していることから、投資をお願いしました。

山岸:ベンチャー育成を通した慶応の研究成果の社会への実装がKIIのミッションです。理工学部は医学部やSFCに比べ、研究成果を使ったベンチャーが少ない中、同学部でAI研究と共同研究を行った渡辺さん。“産学連携の出口としてのベンチャー”のモデルになっていただきたい。

渡辺さんの強みは「技術が分かる」だけではありません。新卒入社したフォーバルでは、会長直轄プログラムで、ハードな営業業務を経験。転職後は、戦略コンサルタントとして活躍しつつ、公認会計士の資格を取得しました。

異色の経歴で培った多様なスキルセットと根性を持つ起業家なので、変化への対応力が必須のIT業界でも生き残れるはず。実際、ユーザー投票の結果を商品化するファッション・コミュニティからピポッドしたAI事業は、見事軌道に乗せました。

渡辺:パーソナルAI「SENSY」は、今春から急速に成長。今後は個人の嗜好をより解析し、対象を「ファッション」と「食」から、「コスメ」「映画」といったライフスタイル全般に展開します。「SENSY」が目指すのは、いつでも助けてくれるドラえもんのような存在。事業拡大のため、グリー創業メンバーの山岸さんには先輩起業家としてもご指導いただきたい。

山岸:“AIの波”が来ている今、会社組織を既に持ち、事業提携や資金調達ができるカラフル・ボードは、サーフィンで言えば沖に出ている状態。うまく波に乗り、一気に成長することを期待しています。

渡辺:我々のビジョンは、自分のファッションセンスを身につけたAIが他人に利用されるような「 感性が流通するプラットフォームの創造」。今後はKIIとの提携を生かし、生体認証などの情報を取るセンシング技術や解析した嗜好を表現するロボティクスや言語学など、学内の優れたAI以外の技術を取り入れます。

AIはグローバルで戦うことを宿命づけられた分野ー来年度の海外展開を足がかりに、「SENSY」で日本発世界のパーソナルAIプラットフォームを狙います。


山岸広太郎
(やまぎし・こうたろう)◎慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)代表取締役社長。慶應義塾大学経済学部卒。日経BP、シーネットネットワークスジャパン(現朝日インタラクティブ)、グリーの共同創業を経て、2015年12月のKII設立時より現職。グリー取締役(非常勤)。

渡辺祐樹(わたなべ・ゆうき)◎カラフル・ボード代表取締役社長。SENSY人工知能研究所代表。公認会計士。慶應義塾大学理工学部卒。フォーバル、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)を経て、2011年にカラフル・ボードを創業し、現在に至る。

文=山本隆太郎 写真=平岩 享

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