安藤忠雄が世界で手がけた「夢の邸宅」5選

モンテレイの住宅(Photo by Shigeo Ogawa)

「私の建築家としての経歴は、個人宅の設計から始まっています」と語るように、安藤忠雄の実質的なデビュー作となったのは、「住吉の長屋」(1976)だった。その後、海外で初めての住宅設計となったアメリカの実業家のための「シカゴの住宅」(97)メキシコの資産家のための「モンテレイの住宅」(2011)など、それぞれの国でクライアントと共に作り上げた、夢の邸宅を紹介する[関連:世界の富豪たちが安藤建築に託す夢]。


HOUSE IN CHICAGO
シカゴの住宅
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シカゴの都心に近い閑静な住宅街に位置する。細長い敷地に沿って緑と水庭に囲まれた伸びやかな居住空間をつくり出している。南北の2つの棟を長いデッキとスロープでつなぐ構成になっており、南(右)側の棟は、依頼主の家族のためのプライベートスペースで、北(左)側は2層吹き抜けのエントランスホールとゲストルームなどのパブリックスペース。

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2棟の間をつなぐ2階にはデッキテラスを架け、西(下)側の外を水庭とし、そこに面したテラス下のスペースを住まいの中心となるリビングルームとしている。棟の一部に円弧状にかきとる壁があるのは、依頼主のリクエストだった古いポプラの樹をそのままのかたちで残すために設えたものだ。写真は水庭越しに見る建物。(アメリカ合衆国、シカゴ1992〜97)。写真/新建築社 Sketch/Tadao Ando

HOUSE IN MONTERREY
モンテレイの住宅
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メキシコ・モンテレイ市街を見下ろす山間にある延床面積1500㎡の大邸宅。深い樹木に囲まれた住居は、3層からなるロ字型とZ字型を組み合わせた構造で、最上階が長いアプローチとエントランス及びそれにつながるギャラリー。2階はゲストルームやゲスト用のダイニングルームなどのパブリックスペースが配置され、1階は家族の寝室やキッチン、リビング、ダイニングルーム、ライブラリーなどがあり、テラスとプールにつながっている。


敷地が斜面になっていることから、建物は地形に沿って軸をずらしながらセットバックしていく構成になっている。写真は、南側の外観からプール越しに見た建物。(メキシコ、モンテレイシティ2006〜11)。写真/小川重雄 Sketch/Tadao Ando

ROW HOUSE IN SUMIYOSHI
住吉の長屋

低層木造家屋のひしめく大阪の下町の一角にある3軒長屋の中央の1棟を切り取って、コンクリートのボックスを挿入。中庭をはさんで1階は居間と食堂、台所、浴室、2階は子供部屋と寝室、それぞれの空間はブリッジと階段で結ばれる。玄関のある通路側のファサードは壁で閉じたが、住居の中心部に中庭を据えることで、各部屋に光や風が入り込む構造になっている(大阪市1975〜76)。
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構成=中村正人

この記事は 「Forbes JAPAN No.31 2017年2月号(2016/12/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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