グッチのマルコ・ビッザーリCEO(写真 = 後藤秀二)

2015年1月にグッチのCEOに着任したマルコ・ビッザーリ。彼は当時無名だったアレッサンドロ・ミケーレをクリエイティブディレクターに大抜擢。それを機にわずか2年弱でグッチの業績を驚異的に回復させた立役者だ。アートプロジェクトのために来日した業界の寵児に話を聞いた-。

トレードマークの2mを超す長身を深くソファに沈めた眼前のマルコ・ビッザーリ。その佇まいには辣腕経営者という評判から想像し得る威圧感はない。まずはドラマの始まり、グッチのCEOに声が掛かった直後の印象を尋ねてみる。すると穏やかに、だがとても早口でこう語り始めた。

「前職も軌道に乗っており、実は少し考える時間を頂きました。ただ、引き受けた場合は相当大きな改革を行う必要がある、ということはわかっていました。当時、グッチはラグジュアリー市場の堅調な拡大に反し、大きくシェアを失っていたのです」

「最終的に受諾の覚悟を決めた後、改革を始めるにあたって私は、グッチをファッション界の中心的なポジションに引き戻さなければならない、と考えました。そしてそのためには創造性に富み、グッチの美的世界をトータルに構築できる新たな人材が必要だと判断し、すぐにリサーチに取り掛かったのです」

そこで目に留まったのがアレッサンドロ・ミケーレである。彼との最初の電話はとても紳士的で楽しいものだったという。

「その電話で、次はミケーレのアパートメントで会う約束をしました。数日後、私は彼の家で4時間も話し込み、以来2週間、何度もグッチについて意見を交わしました。同時に彼から幾つものアイデアやイメージがメールで送られてきましたが、そこに新しいグッチのすべてがあったのです」

ビッザーリは躊躇なく、無名だったミケーレにグッチの全クリエイティブを託すことを決断。ついに新生グッチがスタートする。ビッザーリにミケーレのどんな才能を特に評価したのか、尋ねてみた。

「まず前提として、彼はグッチに12年も勤めていたので、グッチのことを完璧に知り尽くしていた点が大きかった。ブランドの歴史だけでなく、現状の問題点なども含めて。そのうえで彼の中にはユニークな価値観があり、それが今日のグッチの魅力的な風景につながっています。さらにとても明快でした。自分が何をしたいか、グッチはこの先どうすべきか、クリアなビジョンをもっており、話を進めやすかったのです。

そしてもうひとつが、彼は普通の感覚の持ち主だという点。もちろん“普通”といっても彼自身がということではなく、“普通”の何たるかも理解している、という意味ですが(笑)」

世界中の人気をさらったモードなスタイル

2015年3月、ミケーレが本格的に担当した初コレクション、2015AWウィメンズが周囲の予想を裏切り大評判に。それに伴い2014年に前年比1.1%減の35億ユーロだった売り上げも回復し始めた。翌2015年には40億ユーロとなり、将来的には60億ユーロに届くだろうと予想されている。

ファーをあしらったスリッパなど、実際に誰もが欲しがる大ヒット商品も誕生。ただ、正直それらの成功は、主にウィメンズ部門によってもたらされているようにも思える。なぜなら男性は女性に比べ保守的であり、ミケーレの手がけるアイテムはややモード色が強すぎるように感じるからだ。だがそのような疑問に対しても、ビッザーリはすでに解答をもっていた。

文=友永文博 写真=後藤秀二 編集=高城昭夫

 

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