「取り憑かれたように、パーソナルケア用品に関心を持つようになりました」と、エレットは振り返る。エレットはスターバックス創業者のハワード・シュルツが率いる投資会社Maveronのパートナーとして、2008年から2013年までサンフランシスコ本社のトップを務めていた。「男性のヒゲ剃りのように、女性にとって習慣になっていることは何だろうと考えました」
やがてエレットは市場規模150億ドル(約1兆7,600億円)に上る米国のヘアカラー市場を調べ始め、新規参入の余地があることに気づいた。女性の85%が髪を染めており、その頻度は平均すると8週間に1回。52%が市販のヘアカラー剤を使って自宅で染め、48%が美容室で染める。
ドラッグストアに並ぶ、化学物質が大量に含まれた5.99ドル程度のヘアカラー剤を使うか、プロの美容師によるカラーリングに200ドル以上費やすか。市場は見事に二極化していた。
その中間を開拓するため、エレットは2013年にベンチャーキャピタルの世界を去り、自ら起業した。社名の「マディソン・リード(Madison Reed)」は娘の名前だ。これまでの資金調達額は4,000万ドル(約47億円)に上る。
ヘアカラー剤の定期購入サービス
マディソン・リードが販売するヘアカラー剤の売りは、サロン用ヘアカラー剤と同等以上の品質だ。原料の安全性や透明性を重視する現代の消費者のために、イタリアの専門メーカーと組み、アンモニア、レゾルシノール、パラベン、フタル酸エステル、グルテン、パラフェニレンジアミン(PPD)を排したフォーミュラを完成させた。
価格は、一度きりの購入の場合は1箱25ドルだが、会員になって定期購入すると19.95ドルになる。会員の平均的な購入サイクルは6週間に1回。マディソン・リードにしてみれば、少なくとも1人につき年間160ドルの売り上げが保証される(ヘアカラー剤を2本使うロングヘアーの場合は240ドル)。加えて、色落ちを防ぐシャンプーやコンディショナーの売り上げもある。