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2016.12.26 08:00

日本が「働き方後進国」を脱却するために必要なこと

illustration by Masao Yamazaki

2016年ほど、「働き方」に世間の注目が集まった年はない。「人生100年時代」に適応するための未来図とはー。ベストセラー『ライフ・シフト』共著者に聞く。

長寿国家の日本は、本来ならいち早く「人生100年時代」に適応する取り組みを進めていなければなりません。それなのに、働き方のバリエーションが乏しく、100年時代に適応できていません。これが日本経済の低成長の理由でもあります。
 
日本は100年時代に必要な「無形資産」に着目するべきです。つまり、スキルや知識を身につけ、新ステージへ移行する意思と能力、つまり“変身資産”への投資です。日本は「教育→仕事→引退」という“3ステージ型”の人生に固執しすぎています。これは「人生70年時代」のスタイルであり、100年時代には通用しません。

日本政府はこの問題を解決しなければなりません。引退した人はもちろん、全ての年齢層において、労働者たちがもっとフレキシブルに働けるようにサポートする必要があります。また、女性の労働人口が増えるようなインセンティブや、個々人がライフタイムというスパンで物事を選択できるようにするなどの支援も求められています。
 
個人が行うべきなのは、与えられたキャリアの中でスキルや知識に対して投資し、それをアップデートしていくことです。さらに、精神的なフレキシビリティを持つことはもっと重要です。特に仕事をしている男性に顕著なのですが、年を取るに従って、同世代、似たタイプ、同じ興味を持つ者同士で集まり、交友範囲を狭めがちです。

このような狭いネットワークは新しいアイデアや情報、フレキシブルな考えや変化を供給してはくれません。人々はさらに長く働くことや、これまでの仕事とは異なることや職種を模索することが大切で、より順応性をもって、新しいアイデアを受け入れていかなければなりません。

新しいステージに進むための変身資産投資

そして、最も変わらなくてはならないのは、長寿社会への変化に対応できていない企業です。企業はこれまで以上に、元気で健康になった年配の労働者の活用と、豊富な経験や新しいアイデアをもたらしてくれる異業種からの中途採用を積極的に考えなければいけません。仕事ばかりに一生を捧げるような人や、ずっと一つの企業にしがみつくような人の考え方を変える必要があるのです。

今後、個人はロングキャリアという視野を持ち、給与以上に必要なものを企業がどのようにサポートしてくれるかに興味を持っていくようになります。スキルの向上やワーク・ライフ・バランスをどのように仕事で支えていくのかが重要なのです。

そのためにも、無形資産をどのようにして構築していくかが大変重要になってきます。日本ではこれまで、男性は仕事に追われ、仕事にかかわるスキルだけに資産を求め、女性は家族や家にそれを求めてきました。このままでは男性は疲れ切り、そのスキルは長いキャリアの中で世の中に不適合なものになっていきます。これを避けるために、男性はネットワークを多様化させ、自分のスキルに再投資することが大切です。
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インタビュー&翻訳=谷本有香 鈴木裕也=編集

この記事は 「Forbes JAPAN No.31 2017年2月号(2016/12/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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