全社員女性のベンチャーキャピタルも支援
トイレやシャワールーム、メイクコーナーに並んでいるのも、ブルックリンを拠点とするコスメブランドCarol’s Daughterのヘアケア用品や、LOLAのオーガニックタンポンなど、女性が経営する企業の製品ばかりだ。また、会員はGlamsquadをはじめとする出張のヘアメイクサービスを呼ぶこともできる。
美容スペースを充実させた理由について、ゲルマンは次のように話す。「男性は、起き抜けに適当な紐パンツとセーターを着て出かけても、きちんと扱ってもらえます。それに対し、女性は手間のかかる準備が必要です。同時に5つのことをこなさなければいけません。そのためのインフラを整えたいと思いました。美容に手をかけることに関して罪悪感を持ったり、卑下したりしないでほしい。美容は働く女性のたしなみの一部です。決して隠れてコソコソ行うことではないのです」
「The Wing」は、女性をターゲットとした資本集約型のビジネスである。それゆえに資金調達は簡単ではなかった。創業者の二人はともにフィットネスのスタートアップ「クラスパス」(ClassPass)で働いた経験はあったものの、資金集めの経験は皆無だった。「まず、『プレゼン資料の作り方』を検索するところから始めました。男性たちには理解されませんでした」とゲルマンは振り返る。
二人がこれまでに調達した資金は240万ドル(約2億8千万円)。出資者の大半が女性だ。SoulCycle創業者のジュリー・ライスとエリザベス・カトラー、Birchbox共同創業者で現在はFirst Round Capitalの役員であるヘイリー・バーナ、そして経営陣が全員女性のベンチャーファンドBBG(Built By Girls)。一方でフィットネスジムEquinoxのハーヴェイ・スペヴァクCEO、テック投資家のスティーブ・ケイスなど男性の支援者もいる。
「オードリーの体験から生まれた、忙しい人のためのライフハックを一箇所に集めるというアイデアに多くの人が共鳴したのだと思います」とカッサンは話す。「特に女性に響いたようです。彼女たちが、私たちの可能性や発展性を見出してくれました」
クラブのオープンからしばらく経った今、ゲルマンとカッサンは会員のみならず、ニューヨーク外の人々の反響にも励まされている。なんと二人の知らない間にSNS上で#BringTheWing(他の都市にもThe Wingを)キャンペーンが立ち上がり、遠くサンフランシスコやオーストラリアのシドニーからもリクエストの声が届いているのだ。ゲルマンは早速、ニューヨークに二軒目を開くための物件を探し始めている。
インタビューの全編は女性起業家をゲストに迎えるフォーブスのポッドキャスト番組「Million$」にて配信中だ。